2013 Fiscal Year Annual Research Report
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12F02795
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 佳宏 京都大学, 理学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RICCI Claudio 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | X線 / 活動銀河核 / ブラックホール |
Research Abstract |
前年度に引き続き、活動銀河核(AGN)の中心核構造、特に巨大ブラックホール周囲のトーラス構造についての研究を進めた。特に「X線Baldwin効果」とよばれる、鉄K輝線の連続成分に対する強度(等価幅)が、AGN光度と逆相関を示す現象の起源の理解を目指した。まず、近傍宇宙の活動銀河核(AGN)の鉄K輝線のデータを整理し、この逆相関を確認した。この観測結果を、モンテカルロシミュレーションを用いたトーラスからの反射成分の数値スペクトルモデルと比較することで、トーラスの立体角のAGN光度依存性を定量的に導くことに成功した。以上の結果は、投稿論文として出版した(Ricoi et al. 2013a)。AGN中心エンジンからのX線連続スペクトルの形はべき関数で近似できることがわかっている。べきが小さいほど、鉄原子に光電吸収される光子の数が相対的に増加するため、その結果、放出される蛍光鉄K輝線の強度は大きくなる。一方、×線スペクトルのべきは、光度とともに大きくなるという傾向が知られている。このX線連続スペクトルの光度依存性で「X線Baldwin効果」が説明できるかどうかを、上と同様のトーラスからの数値スペクトルモデルを用いて検証した。その結果、それだけでは観測結果全てを説明することは困難であり、やはりトーラス形状が光度依存性をもつことを確かめた。この結果も論文として出版した(Ricci et al, 2013b)。これらの仕事により「光度依存したAGN統一モデル」を確立できた意義はきわめて大きい。以上の結果は3回の国際会議で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線Baldwin効果について、前年度からの研究をまとめあげ、年度内に2本の査読付論文を出版できた。これら論文執筆と並行して、次のテーマの研究も着々と進んでいる。赤外観測で得られたトーラス構造のパラメータとX線スペクトルとの比較、「すざく」衛星のアーカイブデータを用いた1型AGNと2型八GNの鉄K輝線強度の統一解析、自分がPIとして「すざく」により観測した「幅の広い鉄輝線」をもつ2型AGNの詳細解析について、大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、解析中の上記の3つの研究課題を完了させ、論文執筆を行なう。さらに「すざく」衛星による近傍AGNの全アーカイブデータ解析を進め、鉄輝線に加え連続成分の起源についても統一的描像を得る。情報収集および成果発表のため、複数の国際会議にて発表する。また、ASTRO-H科学チームの一員として、初期フェーズ観測天体の選定を行なう。
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Research Products
(5 results)