2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機系太陽電池の高性能化を目指した固体電解質の探索とナノハイブリッド構造の構築
Project/Area Number |
12F02799
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀬川 浩司 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
COJOCARU Ludmila 東京大学, 先端科学技術研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 太陽電池 / 有機系太陽電池 / 固体電解質 / 有機色素 / 金属ナノ多孔体 |
Research Abstract |
本研究は、色素分子を吸着させた酸化チタンナノ多孔体への固体電解質の均一充填を達成するために、分子量や置換基の種類等に着目して各種有機系固体電解質を合成し、酸化チタンナノ多孔体と固体電解質の最適な組み合わせを見出し、高効率な固体型色素増感太陽電池を開発することを目的としている。 本年度は全固体化用の色素分子を優先して研究するために、有機色素やRu錯体色素を中心に検討し、固体電解質は、代表的な有機固体電解質であるspiro-OMeTADを用いた。酸化チタンナノ多孔体の膜厚は、固体電解質の充填に都合の良い2μm程度とした。酸化チタンのナノ多孔質層を透明導電性基板に成膜し、500℃で焼成を行った後に、各種有機色素の溶液に浸漬して光電極を作製した。その後、spiro-OMeTADをスピンコート法で充填し、Au電極を真空蒸着法で成膜することで、全固体色素増感太陽電池を作製した。このとき、酸化チタンの粒径、spiro-OMeTADのスピンコート溶液濃度やスピン回転速度や時間などを各種検討した。これまで検討した殆どの色素分子で、エネルギー変換効率は4%を超えた。特に、D102を用いた場合は、既報の最高値4.1%(Adv.Mater.,17(2005)813)を凌駕する、4.5%に達した。 この高効率化に寄与した物理化学的要因を把握することが、今後の色素や固体電解質の探索を加速させるために必要である。そこで、複素インピーダンス法により検討を行い、色素から酸化チタンに注入された電子の寿命と、開放電圧に一定の相関があることを確認した。これは、酸化チタン・色素と固体電解質の界面の状態に関する重要な知見であり、今後の高効率化に向けた成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全固体色素増感太陽電池において、4%を超える値が得られている。特に、D102を用いた場合は、既報と比較しても高い、4.5%に達した点は、本研究領域において大変意義深い。さらに、当初計画には含まれていなかった、太陽電池の複素インピーダンス計測を取り入れて、色素から酸化チタンに注入された電子の寿命と、開放電圧に一定の相関があることを明らかにした。2012年12月に研究を開始して3か月程度の短期間で、太陽電池作製技術に関する技術レベルのアップや太陽電池特性評価手法の習得を達成するとともに、今後の高効率化に向けて重要な系統的実験データの蓄積を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度についても、H24年度と同様の有機固体電解質を用いる。色素分子に関しては、われわれがのポリチオフェン誘導体など、低分分子材料に加えて高分子系も取り入れる。高効率な全固体色素増感太陽電池を作製できるようになってきたので、高効率化を可能にした要因を調べるために、系統的な太陽電池特性研究を継続する。具体的には、複素インピーダンス法による評価に加えて、太陽電池への照射光を変調した時のセル出力電圧や電流の変化を調べることで、電子寿命、電子拡散係数、電子密度などと太陽電池構成素材との関係を明らかにする。 一方、H24年度に遅延した新規な有機固体電解質探索についても、H25年度には開始する予定である。また、本事業の助成を受けて研究を行っている研究員の所属するボルドー大学化学科との連携研究の強化も視野に研究を進める。
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