2012 Fiscal Year Annual Research Report
高性能熱電素子を実現するための組成傾斜を利用したホイスラー材料に関する研究
Project/Area Number |
12F02817
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
西野 洋一 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RENARD Krystel 名古屋工業大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ホイスラー化合物 / 熱電発電 / 熱電変換材料 / ゼーベック効果 / 非化学量論組成 / 機械的強度 / 発電効率 |
Research Abstract |
自動車からの廃熱を利用して熱電発電を行ううえで、熱電材料によって最高性能を発揮できる温度領域が限られるという問題がある。このことは、従来、一つの素子には1種類ずつのnおよびp型熱電材料のみが使用されてきたことによるものである。そこで、新たな熱電発電のブレークスルーを実現するために、本研究ではFe_2VA1系ホイスラー化合物熱電材料を取り上げ、一つの素子に2種類以上のnおよびp型熱電材料を組み合わせたセグメント型や組成傾斜型熱電素子の開発を試みることで,広範囲の温度領域で効率的な熱電発電性能を実現することを目的とする。 初年度は、主に任意の温度に発電効率のピークを有するp型の熱電材料として、非化学量論組成Fe_2V_<1+x>Al_<1-x>(x=0~-0.20)の試料の作製を試みた。X線回折測定から、すべての試料はホイスラー化合物の単相であることを確認した。しかしながら、|x|>0.12の試料は非常に脆く、機械的強度の低下が見受けられた。光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による組織観察では多数のクラックが観察され、脆性との関係が示唆される。x=0~0.12の試料について熱電特性を測定したところ、Al組成比の増大とともにゼーベック係数のピーク温度は高温側にシフトしており,x=-0.12では600K付近にピークを形成することを確認した。また,ピーク温度でのゼーベック係数は60~100μV/Kとなる。したがって,Al組成比を変化させることにより、任意の温度で高い熱電特性を持つp型材料を設計できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はp型熱電材料の熱電特性向上に焦点を絞って研究を進めたが、大幅に組成を変化させてp型熱電材料の開発を行ったため,試料の脆化が確認された。また,熱電特性の再現性の確認に予想以上に時間がかかったが、現在は試料作製技術も向上しており、来年度以降は計画以上に進展させることは可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,n型熱電材料の研究を行うとともに、p型熱電材料の高機能化を目指してAlサイトに対して原子量の大きいTa原子をドーピングすることにより、Fe_<2+x>V_<1-x>Al_<1-y>Ta_y合金の作製を試みる。また、当初の予定通り、得られた試料を用いてセグメント型や組成傾斜型熱電素子の試作も行う予定である。これまでに得られた成果については、7月に行われる熱電国際会議、9月以降に行われる国内学会で発表するとともに、論文としても公表する予定である。
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