2012 Fiscal Year Annual Research Report
ラマン光学活性と量子力学・分子動力学計算による溶液中タンパク質の柔軟構造の解析
Project/Area Number |
12J00014
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 茂樹 関西学院大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2012 – 2013-03-31
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Keywords | ラマン光学活性 / アミロイド線維 / インスリン / タンパク質 / 量子力学計算 |
Research Abstract |
自然状態で解けた構造を持つタンパク質、アミロイド繊維およびその中間体、会合を行うタンパク質は様々な疾患との関連性が指摘されており、それらタンパク質の詳細な構造解析を行うことはそれらタンパク質の機能と性質を理解する上で非常に重要である。ラマン光学活性(ROA)分光法は分子構造に極めて鋭敏であり、かつラマン散乱という非常に速い現象に基づいている為、速い構造平衡にある分子であっても、スペクトルの量子力学計算と組み合わせることで、その柔軟構造と構造存在比を詳細に解析できる分光分析法であり、従来の分析法では解析の難しいタンパク質の構造を知る上で本研究の必要性は高い。現行のROA装置の欠点は、測定時間が長いこと、また試料量が多いことである。これらの点を解決できれば、ROA測定をより一般的な構造分析法とすることができ、これまで測定の難しかった希少なタンパク質、キラル分子を測定可能となる。測定時間を劇的に減少させることで、タンパク質の変性過程をより詳細に追跡し、中間体構造の数と構造変化過程を追跡できる。 本年度は、世界最高の感度を持つROA測定装置を目指し、設計を行い、装置製作に着手した。この装置は、独創的な光学系を有しており、ラマン散乱光の検出効率については既存のROA装置を越える性能を持っている。今後さらに装置改良を行い装置誤差の削減を行えば、世界の注目を集める研究になることと思われる。 また、インスリンアミロイド線維の高次構造をROA分光の実験スペクトルと量子力学/分子動力学計算から解析する研究に着手した。βヘリックスおよびβロールの二つの三次構造に類似したインスリンモデルを作製し、モデルの妥当性を検証した。アミロイド線維の高次構造が詳細に決定できれば、アミロイド線維の自然化過程の分子的機構についての新たな重要な知見が得られると思われる。
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Research Products
(8 results)