2012 Fiscal Year Annual Research Report
高性能繊維補強セメント複合材料の力学性能評価とその利用に関する研究
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12J00026
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浅野 浩平 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ECC / 繊維配向性 / 寸法効果 / 可視化実験 / 流体解析 |
Research Abstract |
高性能繊維補強セメント系複合材料(HPFRCC : High Performance Fiber-Reinforced Cementitious Composites)の一種であるECC(Engineered Cementitious Composite)の力学性能は、引張応力下で生じたひび割れ断面において、架橋する繊維とマトリックスとの相互作用の総和によって表現できるという観点の基、ECCにおいてメゾスケールレベルに対応する単繊維とマトリックス間における単繊維引抜実験、およびマクロスケールレベルに対応する試験体内部での繊維配向性観察実験の両者で得られた結果を併せて検討することによって、概ねECCの力学性能を評価することが可能と考えた。ECCはマトリックス中の繊維の分散および配向がECCの力学挙動に強く関係することは既往の研究により明らかになっており、打設方向および型枠寸法によって変化することが知られている。既往の研究では、硬化後の繊維補強コンクリートに対して、X線による透過試験からマトリックス中の繊維配向を可視化することで評価を行っているが、供試体に対し限定的な範囲でしか評価することができない。平成24年度では、モルタルのフレッシュ性状時の流動性を模擬した透明な液体を用い、マトリックス中の繊維が可視化された模擬ECCを作製した。引張および曲げ供試体の型枠を模したアクリル水槽に模擬ECCを流し込むことにより、打設方向および境界面、型枠寸法が繊維配向性に及ぼす影響を検討した。その結果、繊維配向性は引張試験体および曲げ試験体ともに打設方向に強く影響を受け、曲げ試験体では繊維が型枠壁面・底面近傍で沿う傾向があり、ECC特有の性状であるウォールエフェクトが確認できた。また、この可視化実験はX線を用いるような実験と比べて、実施が容易かつ極めて安価で済み、実験結果で得られる効果がかなり大きい。現在は流体解析の方面からBCCの流動性や繊維配向性の検討を進めており、試験体内での実現象を解析結果で表現することによって、複雑な形状や実構造物レベルのスケールでの性能評価が可能になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ECCの力学性能を評価する上で必要と考えられる実験は実施済であり、その結果に対する評価・考察を行っている。特に、ECCの繊維配向性の評価に関しては、試験体寸法により変化する繊維配向角分布に対して、独自の手法を用いることで寸法効果を定量的に評価しており、ECCの力学性能の一部に関して評価可能である算定式の構築を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ECCの力学性能・挙動と試験体寸法の関係性、すなわち寸法効果について更なる考察を行う。検討中であるECCの力学性能評価の算定式には寸法効果に関する項が含まれており、これまでの実験結果に依る所が大きい。実験室レベルでは対応できない寸法や、技術的に困難である寸法まで、流体解析によって様々な寸法をカバーすることによって、寸法効果を詳細に把握し、算定式の精度の裏付けを得る。
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Research Products
(2 results)