2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉田 征彦 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 電子顕微鏡法 |
Research Abstract |
8本に分節化したインフルエンザウイルスのゲノムRNA(vRNA)は、それぞれ核蛋白質(NP)およびヘテロ3量体(PA、PB、PB2)のポリメラーゼと共に、vRNAの転写・複製を担うリボ核酸蛋白質複合体(RNP)を形成する。ポリメラーゼは、vRNAの3'および5'末端が形成するプロモーター領域に結合し、棒状のRNPの一端に局在することが生化学的解析および電子顕微鏡法により明らかにされている(Honda et al.,1987年 ; Murti et al., 1988 ; Arranz et al., 2012 ; Moeller et al., 2012)。また、vRNAの3'および5'末端にはRNPのウイルス粒子内への取込みに重要なシグナル配列の存在が報告されている(Fujii et al., 2003 ; Hutchinson et al., 2010)。感染細胞核内で形成された8種類のRNPは細胞膜直下まで輸送され、出芽ウイルス粒子の先端から吊り下げられる様に1セットずつ規則的に取り込まれる(Nodaetal.,2006,2012)。しかし、8種類のRNPがどのように配置しているか、またRNPがどのようにしてウイルス粒子先端の膜直下で認識されるかなど、RNPについては不明な点が多い。そこで、ウイルスの出芽途中および出芽直後のウイルス粒子内において、どのような方向でRNPが取り込まれているかを明らかにすることを目的とした。ウイルス感染細胞の超薄切片を用いて免疫染色を行い、RNPの方向性の指標となるポリメラーゼの局在を調べた。その結果、ポリメラーゼは出芽ウイルス粒子の先端側に限局せず、ウイルス粒子の先端側と基部側の両側に局在した。また、ウイルスの出芽途中においても、細胞膜から吊り下がったRNPの上部(細胞膜直下)で検出されるポリメラーゼとRNPの下部(細胞質)で検出されるポリメラーゼが存在した。ウイルス粒子内において、必ずしも8種類全てのRNPが同一方向ではなく、先端方向にも基部方向にも向いて配置されることが判った。このことから、上下異なる方向を向いたRNPが規則的な配置をとり、ウイルス粒子内へ取込まれると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部で材料と方法について当初の研究計画から変更を行ったものの、18本の分節RNPがウイルス粒子に取込まれるメカニズムを明らかにする」という研究目的に沿って着実に研究を進めている。その結果、既に一部の研究成果を学術集会で発表し、その内容は学術論文として国際学術雑誌に投稿中である。また、その他の解析も研究計画に則って順調に進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
RNPの取込みにおけるウイルス膜貫通蛋白質の細胞質ドメインの重要性を明らかにするため、HA、NAおよびM2の細胞質ドメインを欠損させた遺伝子および蛋白質発現プラスミドを作製した。現在、これらの膜貫通蛋白質とRNPの感染細胞内における共局在と相互作用の有無を解析するために、免疫染色法と免疫共沈降法の条件検討中である。今後は、それぞれの膜蛋白質細胞質ドメイン欠損変異ウイルスを作製し、抗RNP抗体を用いた間接蛍光抗体法により、感染細胞内におけるRNPの局在を観察し、RNPが出芽の場となる細胞膜直下に輸送されるかどうか、培養上清に放出されるウイルス粒子内NPの量が変化するか、変異ウイルスを電子顕微鏡で観察することでウイルス粒子内部に棒状のRNPが取込まれるかどうかを、それぞれ解析する予定である。
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Research Products
(2 results)