2012 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアの首都ジャカルタにおける開発行政とビジネス
Project/Area Number |
12J00036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
茅根 由佳 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 開発 / 民主主義 / 格差 / 地方分権 |
Research Abstract |
本研究では、格差の解消なく経済成長を続ける民主化後のインドネシアの首都ジャカルタ特別州における開発と政治のメカニズムを明らかにする。インドネシアは、スハルト権威主義体制崩壊後、極めてラディカルに政治的自由化、地方分権化が起き、権力は分散され、今では東南アジアで最も「民主的」な国家とされている。しかし、その首都ジャカルタの政治には民主的インドネシアのイメージに反映されない、パラドックスが起きている。本研究は、そのパラドックスがいかなる政治的、経済的背景から発生したものか、格差を助長、固定化してきた要因は何か、といった問いの解明を目指すものである。 本年度は、まず、修士論文においてまとめた水道民営化に関する研究をもとに「インドネシアの首都ジャカルタ水道事業と民営化政策をめぐる攻防―ポスト・スハルト期の政治経済構造の継続と変容―」を執筆、学術誌『東南アジア研究』に投稿し、掲載が確定している。さらに、「民主主義」時代の今日において、貧困層の政治的権利が行政からいかに軽視される状態に至ったのかを明らかにするため、1997年の経済危機後の、中央政府及び州政府の行政対応に着眼して調査を進めた。 そこで、民主化後の格差を非政治化する首都開発のメカニズムについて詳細に検討するため、2012年7月から9月、及び同年11月から2013年3月まで、合計約5ヶ月間、インドネシアのジャカルタにて予備調査を行った。調査においては、現地の公共事業に携わる国営企業省・エネルギー・鉱山資源省官僚、そして国営企業の民営化に詳しい政治家、大学教員を対象にインタビューを行い、インドネシア大学、国立図書館、会計監査院などで、統計資料やこれまでのインドネシアの開発行政と資源事業に関する法律や政策についての情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、修士論文にまとめた研究をもとに論文投稿を行い、これまでの研究成果を公表することによって達成できた。またジャカルタでの調査において、インドネシアの開発行政と発展経緯に関する基礎的情報を整理し、首都ジャカルタ特別州の国内における地政学的特殊性(法制度、メディア及び人口集中度)、開発の歴史と格差問題の現状を把握することができた。しかしインドネシア語、インタビュー調査やディスカッションに関しては課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に収集した情報や資料を統合したうえで、インドネシアの首都開発行政に関するより詳細な事実確認を目的に、9月より約3ヶ月間の現地調査を行う。具体的には、まず1997年の政治変動期以降の都市開発事業、インフラ・ビジネスの展開状況と州政府との関係、及び昨年2012年に行われた州知事選挙の政策的争点と当選した知事のマニフェストについて把握するための資料収集を行う。これらの現地における情報収集、及び聞き取り調査では、行政機関(国家開発企画庁、公共事業省、財務省)、都市貧困問題に取り組むNGO(Urban Poor Consortium, WALHI)、メディア(Kompas, Jakarta Post, Tempo)、調査研究機関(インドネシア大学,インドネシア世論調査研究所、民間シンクタンク)、政治家、企業(不動産開発、インフラ開発、建設業)を主な対象に情報収集を行っていく予定である。
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Research Products
(1 results)