Research Abstract |
本年度は一般相対論,および修正重力理論における多体系ダイナミクスの理解の端緒として,主に次の研究を行った. 1.二体系の外側にもう一つの天体が運動している系,すなわち,階層的な三体系において,外側の一体の一般相対論的な近日点移動について調べ,その解析的な表式を得た[K. Yamada & H. Asada, Mon. Not. R. Astron. Soc. 423, 3540(2012)]. 2.一般相対論的三体問題の正三角解は三体が等質量など特別な場合にしか許されないことを受け,この解に対応する任意の質量比に対しても許されるような新たな解を求めた.結果として,一般相対論的な補正を各天体間の距離に加える事で,任意の質量比に対して許される三角解を発見した.また,その補正の解析的表式を得た[K. Yamada & H. Asada, Phys. Rev. D86, 124029(2012)]. 3.一方の天体が観測されないような二体系,すなわち,位置天文的連星の観測データから,この系の軌道要素を決定する手法を調べた.その結果,統計的な解析法を得た[H. Iwama, K. Yamada, & H. Asada, Publ. Astron. Soc. Japan 65, 2(2013)]. 4.Non-dynamical Chern-Simons重力理論による二体系ダイナミクスの量子干渉効果への影響を調べた.結果として,一般相対論では予言されない新たな量子干渉効果を求めた.また,この効果が時間変化を調べ,特徴的な日変動と年変動を得た[H. Okawara, K. Yamada, & H. Asada, Phys. Rev. Lett. 109, 231101(2012)], 1および2は浅田秀樹氏,3は岩間裕文氏と浅田秀樹氏,また4は大河原広樹氏と浅田秀樹氏との共同研究である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高精度位置天文観測機JASMINEやGaiaの実証実験および打ち上げが直近に迫り,観測データの理解に必要である一般相対論的な多体系ダイナミクスの理論的研究は急務である.本年度の研究1-3はこれに応えるものであるだけでなく,近い将来の観測をもとに一般相対論の理論検証が期待できる.また,研究4は一般相対論を超える重力理論の一つであるChem-Simons重力理論の理論検証への応用が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
一般相対論的な多体系ダイナミクスの理解のために,系の安定性を調べることは重要である.また,次世代重力波検出器の可動が数年後に迫っている今日,多体系から放出される重力波の理論的研究は急務である.これらを受けて,今後の課題の推進方策は以下のようにする. まず,既知の一般相対論的三体問題の解,すなわち,三角解の安定性を調べる. 次に,三体系から放出される重力波の三体相互作用による補正を調べる.
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