2012 Fiscal Year Annual Research Report
自己推進運動系における自発的対称性の破れとモード分岐
Project/Area Number |
12J00127
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高畠 芙弥 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非平衡開放系 / 自己推進運動 / マランゴニ対流 / 運動モード転移 |
Research Abstract |
本研究では、化学系から成る実空間モデル系での実験を基軸として、生体に代表されるような非平衡開放系における自己推進運動のメカニズムに迫り、その本質を捉えたモデルを構築することを目的としている。本年度は特に、マランゴニ効果による自己推進運動系に着目して研究を行った。その結果、以下のような成果が得られた。 (1)水上に浮かぶ油滴と固形界面活性剤から成る固/液複合体の自己推進運動に関する実験を行った。これまでの研究で、複合体が自発的に並進運動や回転運動といった規則運動を示すことや、その運動モード間の転移が固体サイズに依存して起こることが明らかとなっている。今回、固体のサイズだけでなく油滴のサイズも同時に変化させて実験を行うことにより、複合体の運動モード転移には固体と油滴のサイズ比が重要なパラメータとなることを見出した。また、固体のサイズを固定して油滴のサイズを変化させた際の運動モード転移の様相を、共同研究者が行った理論的計算と比較した結果、実験と理論の整合性があることが示された。これにより、複合体の自発的な回転運動が生じるメカニズムが明らかとなった。 (2)局所的な熱的非平衡場において引き起こされる自己推進運動に関する実験を行った。具体的には、液体基盤上に浮かべた液滴にレーザー光を照射して局所加熱することで、温度マランゴニ効果に駆動される液滴の運動を観測した。レーザー出力を上げていくと、液滴の運動モードが静止状態から往復運動、回転運動へと変化することを見出した。この時、液滴内部の対流を可視化することにより、往復運動が生じる際には左右対称のロール状対流が生じているのに対し、回転運動が生じる際には対流構造が自発的に左右非対称になっていることが確認された。また、温度勾配により生じる液滴内部の対流が運動に与える効果を考慮に入れた簡単な力学モデルにより、実験結果を定性的に再現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は化学マランゴニ効果に駆動される油滴/固形界面活性剤複合体の運動モード変化のパラメータ依存性に関する実験を行った。その結果は共同研究者が行った理論的研究とともに論文として出版された。また、局所加熱によって引き起こされる油滴の自己推進運動に関する実験も行い、それに対応する力学的モデルを考案した。この結果をまとめた論文を、現在執筆中である。このように、順調に研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
化学的あるいは熱的な非平衡場における液滴の自己推進運動に関して実験を中心に研究を行った結果、前後非対称性を有する自己推進物体の一般的な特徴が明らかになりつつある。今後は、これまで得た知見から他の実験系(例えば、加振機を用いた振動場による自己推進運動系など)での運動モードを予測し、実際に検証実験を行っていく予定である。その後、実際の生体や生体由来の分子を用いた実験系を構築し、実空間モデルとの比較・検討を行うことで生体の運動原理に迫ることを目標とする。
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Research Products
(9 results)