2012 Fiscal Year Annual Research Report
過渡的相互作用に基づく、ユビキチンのユビキチン修飾酵素認識機構の解明
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12J00159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小笠 広起 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 構造生物学 / 核磁気共鳴法 / NMR / ユビキチン / ユビキチンリガーゼ / 転移交差飽和法 |
Research Abstract |
【目的】ユビキチンリガーゼE6APと、E6APにユビキチンを転移させるUbcH7の複合体について、両者の活性システインどうしが近接するような、一過的にしか形成されない活性状態を検出し、ユビキチン転移反応機構を解明することを目的としている。 【当該年度の研究成果】 1.E6APとUbcH7の発現調製方法の確立と活性・親和性確認 SDS-PAGE解析により、調製したE6APのポリユビキチン修飾に伴う移動度の変化を観測した。 また、E6APに対してUbcH7を添加した時の、複合体形成に伴う熱量変化を観測するITC解析により、両者が先行報告と対応した親和性を有していることを確認した。 2.E6AP-UbcH7複合体における活性状態検出の試み つづいて、転移交差飽和を利用したNMR解析により、E6AP-UbcH7複合体におけるUbcH7分子上の結合界面を解析した。その結果、E6APとUbcH7の結合界面を同定することには成功したが、両者の活性システインは離れており、活性状態を形成していないことが判明した。 3.活性状態形成の駆動力の同定 活性状態形成率が検出限界以下と小さいのは、E6APのC末端ドメイン(C-lobe)とユビキチンの相互作用が駆動力として重要なためではないかと考えた。そこで、C-lobeのドメイン切り出し体とユビキチンの相互作用をNMRにより解析した結果、C-lobeの活性システイン周辺の6シートが、ユビキチン結合界面として同定された。 【意義・重要性】本研究によってはじめて、E6AP-UbcH7複合体では活性状態を形成しないこと、そして、C-lobeとユビキチンの相互作用が活性状態形成に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
E6APをはじめとするユビキチンリガーゼは、一般的には安定性が低い。実際、発現最適化によってはじめて、NMR解析にも十分な収量でE6APを得ることができるようになった成果は大きい。これに加えて、活性状態形成の駆動力となりうるC-lobeとユビキチンの相互作用を、実際に検出できたことは、本研究の目的を達成するうえで重要な進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
活性状態形成率が高いと考えられる、ユビキチンが活性システインを介して共有結合したUbcH7とE6APとの三者複合体において、転移交差飽和を利用したNMR解析を行うことで、活性状態の検出を試みる。さらに、本テーマとは別に私が当研究室で開発した、常磁性緩和促進効果を利用した新規NMR手法も適用することで、活性状態をより精密に解析できると期待される。 明らかとなった活性状態の構造から、ユビキチンがUbcH7からE6APへと転移する反応機構を考察する。転移反応機構を阻害する化合物は新しい抗癌剤として期待されているため、本研究成果に基づいて、転移反応を阻害するための方法も考案する。
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Research Products
(4 results)