2013 Fiscal Year Annual Research Report
過渡的相互作用に基づく、ユビキチンのユビキチン修飾酵素認識機構の解明
Project/Area Number |
12J00159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小笠 広起 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 構造生物学 / 核磁気共鳴法 / NMR / ユビキチン / 常磁性緩和促進効果 / PRE |
Research Abstract |
【目的】 本研究では、ユビキチン(Ub)とユビキチン修飾酵素の間の動的な認識機構を解明することを目的とした。これまで、Ub-酵母ユビキチン加水分解酵素(YUH)複合体と、Ub-ユビキチン結合酵素-ユビキチンリガーゼ三者複合体という、異なる二つの相互作用系を解析対象として研究を行ってきたが、投稿論文作成中の前者のテーマについてのみ、報告する。本テーマではとくに、YUHがUb構造ドメインを選択的に認識し、加水分解する動的な反応機構を解明することを目的とした。 【当該年度の研究成果】 昨年度までに、Gd^<3+>が誘起する常磁性緩和促進効果(PRE)を利用したNMR解析によって、活性中間体を模倣したユビキチンアルデヒド(Ubal)-YUH複合体の結晶構造とは異なる動的な結合様式が存在することを明らかとしていた。当該年度では、まず、NMRスペクトルと緩和分散実験から、その動的複合体が活性中間体に先行して過渡的に形成されることを示した。そのうえで、Mn^<2+>, Fe3+, VO^<2+>, Ni¥^<2+>の4種類の常磁性金属が誘起するPREを利用して解析することで、その動的複合体に置ける距離情報を正確に取得した。最後に、得られた距離情報を入力して、XPLOR-NIHによる構造計算を行い、動的複合体の結合様式を可視化した。 【意義・重要性】 本研究で明らかとなった、活性中間体に先立って形成される動的複合体では、UbC末端がYU且の反応部位に入っていない状態であった。このような結合様式であれば、YUHと近接したまま、UbC末端が多様なコンフォメーション間を交換することにより、結合に適した構造を効率よく選別できる。これにより、活性中間体を、高い選択性で、効率よく形成できると提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
NMRスペクトルと緩和分散実験における速度論的解析によって、今回検出した動的複合体が、活性中間体に先立って形成されることを、定量的に示している。そして、4種類の常磁性金属を利用して、動的構造平衡にある複合体の構造情報を正確に抽出する解析方法を確立している。 以上の二点について、本研究では独創的な成果を上げているので、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、投稿論文の作成を行い、論文発表する予定である。
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