2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00227
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀川 康史 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 室町幕府 / 守護 / 国人 / 悪党 / 南北朝 / 在地社会 / 荘園 |
Research Abstract |
本研究は、鎌倉末期から室町初期までの約百年間にわたる社会変動(14世紀内乱)の具体相を、多面的・総合的に考察・把握することを試みるものである。2012年度は、南北朝期の室町幕府における守護制度・軍事制度の特質とその変質過程を検討し、室町幕府体制の展開について考察した。研究実績は以下の通りである。 (1)「南北朝期播磨における守護・国人と悪党事件」を執筆した。本論文は『史学雑誌』に掲載が決定している。本論文は、南北朝期の播磨を事例に、当該期の室町幕府における守護の役割・権限、および守護・国人の関係性の変化を検討し、1350年代を画期とした守護制度・軍事制度の展開を明らかにするとともに、これらの変化が在地社会では所謂「悪党の守護被官化」 として現れることを論じたものである。 (2)「北陸道「両大将」と守護・国人―初期室町幕府軍事制度再検討の試み―」を執筆した。 本論文は『歴史学研究』に掲載が決定している。本論文は、南北朝初期の「越前合戦」を主な事例に、従来の室町幕府軍事制度研究を史料論・方法論など多方面にわたって再検討し、その上で初期室町幕府軍事制度の特質を考察したものである。 (3)「南北朝期における河野通盛の動向と伊予守護職」を執筆した。本論文は現在審査中である。本論文は、南北朝期伊予における河野通盛の守護職獲得に向けた動向を明らかにするとともに、その動向を室町幕府体制の展開のなかに位置づけることを目的としたものである。 (4)学会発表としては(1)「室町幕府の軍事動員と在地領主―守護制度との関わりから―」 (2012年6月、室町期研究会)、(2)「南北朝期の室町幕府侍所と守護・国人」(2012年11月、史学会大会)、(3)「再論・南北朝期の室町幕府侍所と守護・国人」(2013年3月、東京大学中世史研究会)を報告した。いずれも次年度以降、論文として投稿することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な目的として、(1)室町幕府の権力構造の特質とその展開過程を明らかにすること。(2)その際、在地領主や在地社会の動向を組み込みながら議論を展開すること、の二点を掲げた。2012年度中に投稿した3本の論文は、これらを十分に意識して執筆したものであるが、うち2本が査読付きの学術雑誌に掲載が決定している(もう1本は現在審査中)。私の研究視角・研究内容が一定の評価を得たことの証左と見倣してよいと考え、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、研究はおおむね順調に進展しており、研究計画に大きな変更は必要ないと考える。来年度も引き続き、(1)室町幕府の権力構造の変質過程を追いながら、(2)守護・国人の関係性について考察することを目的とする。それと同時に、(3)2012年度に行った研究報告を論文として投稿する。(4)3年目の研究計画を見据え、荘園・在地社会の史料・先行研究の調査を始めることにしたい。
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Research Products
(3 results)