2013 Fiscal Year Annual Research Report
高速AFMによる膜輸送タンパク質一分子の動的構造解析
Project/Area Number |
12J00228
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山下 隼人 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高速原子間力顕微鏡 / 1分子イメージング / ナノ計測 / ABCトランスポーター / チャネル / アクアポリン |
Research Abstract |
本研究は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて疾患に関与するトランスポーターやチャネルタンパク質1分子を直接可視化する事により、これら膜輸送タンパク質の構造ダイナミクスやこれらが関わる疾患の分子メカニズムを明らかにする事が目的である。本年度の研究実績を以下に記述する。 1. ABCトランスポーターの大量発現および単離精製と1分子観察 昨年度昆虫細胞を用いた発現系の構築を開始し、本年度引き続き試料調製を行った。その結果、ABCトランスポーターファミリーのメンバーの1つであるABCF2の大量発現および単離精製に成功した。ABCF2は「がん」をはじめとする疾患との関連から重要なだけでなく、分子がNBDのみから構成されているためABCトランスポーターにおけるNBDの動作メカニズムを理解する上で、モデルとなる有用なタンパク質である。そこで、本研究で得られたタンパク試料を用いて、ABCF2の1分子構造の高速AFM観察を行った。その結果、溶液中にて2つのドメインがペアとなっている分子が観察された。ABCF2の結晶構造はまだ明らかにされていないが、ホモロジーモデル(ABCE1)とこのAFM像を比較した結果、これらのドメインは、2つのNBDに対応しているものと考えられる。 2. アクアポリンArray構造の可視化 疾患に関与するチャネルタンパク質として、脳のアストロサイトに多量に発現し、水輸送に重要な役割を果たすアクアポリン4(AQP4)の高速AFM観察を行った。昆虫細胞で大量発現し、単離精製したAQP4を脂質膜に再構成しAFM観察を行った結果、アストロサイトで見られるような、orthogonal array構造を観察する事に成功した。また、この構造中でAQP4の4量体(テトラマー)が規則正しく配列している様子を高分解能に撮影する事にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昆虫細胞による膜タンパク質の発現系および単離精製系を立ち上げる事ができたため。これにより、高速AFMを用いてABCF2の構造観察に成功した。また、同様の発現系から得られたアクアポリン4に関しても、高速AFM観察により、脳のアストロサイトで見られるような集合構造を観察できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度立ち上げる事が出来た膜タンパク質発現精製系を用いて、得られた膜タンパク質サンプルの高速AFM観察を引き続き試みる。AQP4に関して、このタンパク質が関与する疾患である、視神経脊髄炎の初期分子過程を明らかにするため、高速AFMにより観察出来たArray集合構造に対して、自己抗体が結合する過程の可視化を試みる。
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Research Products
(4 results)