2012 Fiscal Year Annual Research Report
肺由来血管内皮細胞における低酸素応答転写因子HIF-3alphaの機能解析
Project/Area Number |
12J00314
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 里美 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 低酸素応答 / Hypoxia Inducible Factor-3alpha / 発現抑制機構 / 肺血管内皮細胞 / 肺高血圧症 |
Research Abstract |
体研究の目的は、肺の血管内皮細胞におけるHIF-3αの機能解析を通じて、負の低酸素応答制御機構の一端とその意義を解明することである。申請者はこれまでに、野生型(WT)マウスおよびHIF-3αノックアウト(KO)マウスのそれぞれから単離した肺由来血管内皮細胞(EC)について比較検討を行い、HIF-3αは一部のHIF標的遺伝子を抑制性に制御し、肺ECの機能維持に関与している可能性を見出した。当該年度では、(1)HIF-3α依存性の確認、(2)標的遺伝子の探索、(3)HIF-3αを介した発現抑制機構の解明を課題とし、解析を行った。 HIF-3αKO ECにHIF-3αを遺伝子導入したところ、細胞増殖能および管腔形成能は、mock細胞と比較して有意に上昇し、WT ECと同程度にまで改善した。また、HIF-3αKOによって顕著に発現亢進したAng2、Tie2およびFlk1の発現は、HIF-3αレスキューによって低下した。以上より、HIF-3αは肺ECの恒常性維持に寄与し、血管新生に関連したHIF標的遺伝子を負に制御することが明らかとなった。加えて、HIF-3αKO ECは、細胞増殖および血管新生シグナルの代表的な経路であるAktのリン酸化レベルが著しく低下しており、HIF-3αの機能破壊はAktを介したシグナル伝達経路の障害を招くという可能性が示唆された。さらに、標的遺伝子のプロモーター領域に対するHIF-1αおよびHIF-2αのChIPアッセイを行った。その結果、WTECにおいて、Ang2に対するHIF-αの結合は見られなかった一方、HIF-3αKOECにおいて、HIF-1αの結合が観察された。従って、WTECにおいて、HIF-3αは標的遺伝子に対するHIF-1αの結合を阻害していることが示唆され、HIF-3αによる負の発現制御機構の一端が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、おおむね研究実施計画に則って解析を進められており、課題に対する一定の答えを得られたと考えている。現在のところ、WTECにおいて、HIF-3αが標的遺伝子のプロモーターに結合しているかどうかは不明であるため、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果により、HIF-3αの機能破壊はAktを介したシグナル伝達経路の障害を招き、細胞増殖能や管腔形成能の低下を引き起こすことが示唆されたが、HIF-3αに抑制制御されるどの因子がこの経路に関与しているか不明である。まずは、Ang2/Tie2およびVEGF/Flk1シグナルに着目し、肺ECの恒常性維持との関連性を明らかにする。また、HIF-3α存在下、つまりWTECにおいてHIF-3αが標的遺伝子のHRE領域に結合するのか、ChIPassayとプロモーターアッセイを併せて検証する予定である。これにより、HIF-3αによる負の発現制御機構についてより詳細な知見が得られると考える。
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Research Products
(3 results)