2012 Fiscal Year Annual Research Report
権威主義体制と「単一政党優位」の時代における政党政治
Project/Area Number |
12J00335
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
今井 真士 上智大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比較政治学 / 権威主義体制 / 政党政治 / 選挙前連合 / 暫定政権 / エジプト / 中東地域 |
Research Abstract |
「権威主義体制と『単一政党優位』の時代の政党政治」という研究課題の下、本年度は、中東地域、特にエジプトのムバーラク政権下の政党政治とその政権崩壊後の変化を分析した。 まず、権威主義体制下の政党政治に関して2つの論文を執筆した。第一に、「権威主義体制下の単一政党優位と名目的合意形成」と題する論文において、筆者は、権威主義体制の支配者が野党勢力に一方的に提案する政策協議の形態の違いが与野党間の関係性に異なる影響を与えうることを論じた。この分析は、権威主義体制下の与野党間の協議の舞台としてこれまで注目されてこなかった「特設の合意形成の場」の政治的効果を体系的に理解する一助になる。第二に、「権威主義体制下の単一政党優位と選挙前連合の形成」と題する論文において、筆者は、政党間の競合性と選挙制度が権威主義体制下の野党の選挙前連合に一定の効果を与えていることを実証した。とりわけ、野党第一党は、(1)野党全体の議席占有率が高いときに連合を形成しやすく、(2)小選挙区制が採用されているときには連合を形成しにくくなることなどを明らかにした。特に、権威主義体制下において、小選挙区制という選挙制度は、これまで民主主義体制下の選挙について論証されてきた効果とは正反対の効果を示すことが明らかになった。 次に、政権崩壊後の政党政治に関しては主に1本の学会報告を行なった。「憲法起草と『移行』:ポスト・ムバーラク期のエジプトにおける政党間の合従連衡」と題する学会報告において、筆者は、「アラブの春」以降の中東諸国の暫定政権に着目し、単一政党の優位が崩壊した後の政党政治の変化を論じた。特に、憲法起草と議会選挙の実施をめぐるエジプトの軍部と最大野党のそれぞれの戦略的行動の齟齬は、他党を巻き込み、流動的な政党システムに一定の凝集とブロック化をもたらした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「権威主義体制と『単一政党優位』の時代の政党政治」という研究課題に即して、「単一政党優位」を冠した2本の論文を発表した。また、中東地域の政権崩壊と新政権の樹立の動きを踏まえて、権威主義体制下の政党政治の議論と政権崩壊後の政党政治に関する議論を同時進行で行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も研究計画に即して研究を進めていく。4月中旬の現時点において『日本中東学会年報』誌第29巻に「憲法起草と暫定政権期の政党政治:ポスト・ムバーラク期のエジプトにおける政党間対立の分極化過程」と題する論文を刊行する予定である。『アジア経済』誌「権威主義体制における議会と選挙の役割」特集号に論文を投稿済みである。5月には日本中東学会において「エジプト第二共和政と単一政党の優位?:自由公正党の優位政党(ないしは覇権政党)化の諸条件」と題する研究報告を予定している。
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Research Products
(3 results)