2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニッケル触媒を用いた含硫黄複素環化合物の新規合成法の開発とその応用
Project/Area Number |
12J00362
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井波 輔 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニッケル / 付加反応 / アルキン / イリジウム / エンィン / 二量化反応 |
Research Abstract |
本研究はニッケル触媒を用い、従来は報告例の少なかった含硫黄複素環化合物の簡便な合成法を確立することを目的として行っている。2年目ではニッケル触媒を用いたチオカーバメートのアルキンに対する付加反応を見出した。当初、本反応において脱カルボニルを経るアルキンのチオアミノ化を狙って行ったが、予想に反してカルボニルの脱離を伴わない付加反応が進行した。本反応で得られる生成物は四置換のアルケニルスルフィドであり、その硫黄部位はさらなるカップリング反応などに供することが可能であり、立体選択的な四置換オレフィンの合成法につながる可能性を秘めている。同形式の反応として、パラジウム触媒を用いるチオカーボネートやチオエステルのアルキンへの付加反応が田中および神戸らによって報告されているが、チオカーバメートを用いる今回の例では、パラジウム触媒を用いた場合には全く反応が進行しなかった。また、新たな反応の探索を行う中で、イリジウム触媒を用いた末端アルキンの立体選択的な二量化反応を見出した。本反応で得られる共役エンイン化合物は合成中間体として非常に重要な構造である。従来は、②体もしくは(2)体のいずれかを選択的に得てくる例がほとんどであり、同一の触媒前駆体から反応条件によってそれらの異性体を作り分けたという報告例はきわめて少なく、また、その報告例においても適用できるアルキンが限られるなど、大きな制約があった。今回見出した反応では、それらの制約を緩和することができ、非常に一般性の高いアルキンの位置及び立体選択的な二量化反応となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、ニッケル触媒を用いた、チオカーバメートのアルキンに対する付加反応を見出した。本反応は四置換オレフィンの立体選択的な合成法への展開が期待できる。また、検討の過程でイリジウム触媒を用いた末端アルキンの二量化反応も見出した。この反応はこれまで報告例の少ない、反応条件による立体異性体の選択的な合成法であり、これまで知られている手法に見られた制約を大きく緩和することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた知見をもとに、C-S結合の切断を伴う新規反応の開発を進めて行くことを計画している。これまでは用いる遷移金属触媒としてニッケルを主に扱っていたが、今後はC-S結合を切断することが知られている、ロジウムやパラジウムなど他の金属を用いること考えている。C-S結合を遷移金属によって切断し、アルキンなどの不飽和結合に付加させる場合、酸化的付加後のアルキンの挿入が起こる前に逆反応の還元的脱離が起こり、原料に戻るということが考えられるが、基質として分子内反応を用いてアルキンの挿入を加速する、もしくは、分子内に配位性官能基を導入することで酸化的付加体を安定化させてやることで目的の反応を進行させることができるのではないかと考えている。
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Research Products
(1 results)