2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安田 賢司 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 立体構造予測 / 水和エントロピー / 脱水和 / 積分方程式論 / 形態熱力学アプローチ |
Research Abstract |
タンパク質立体構造予測法の構築に向けた研究に取り組んだ。その為には,(1)構造予測の正解となる天然構造を的確に表現した構造モデル,(2)タンパク質の立体構造形成メカニズムの解明が必要不可欠である。(1)に関して,我々の自由エネルギー関数とそのエンタルピー及びエントロピー成分を用いて,タンパク質の天然構造モデルのキャラクタリゼーションを行う方法を提案した。タンパク質の立体構造は,X線結晶解析やNMR実験を通して決定される。得られた天然構造モデルは,実験条件や構造計算の方法の影響を大きく受けるため,それらが適切なものかを評価する必要がある。木下らの自由エネルギー関数は天然構造の特徴をよく捉えているため,各々の天然構造モデルの特徴や弱点を明らかにすることができる。提案された方法を用いることにより,より良い天然構造モデルを作成するための有用な指針が得られる。(2)に関しては,疎水環境にも適用できるように拡張した我々の自由エネルギー関数を用いて,水及び疎水環境中でのタンパク質立体構造安定性を調べた。二次構造はエンタルピーと水のエントロピーの両方の観点で有利な構造である。水環境中では,水のエントロピーが立体構造を安定化させる効果が強い為,側鎖を出来るだけ密に充填することが優先され,二次構造の含有率はタンパク質により大きく異る。一方で疎水環境中では、溶媒のエントロピーの効果が著しく弱くなる。その為、分子内水素結合形成が重要となる。α-ヘリックス構造はβ-シート構造よりも,より効率良く分子内水素結合を形成できるため,α-ヘリックスが好んで選定されることが分かった。この結果、脂質二重膜中の膜タンパク質はα-ヘリックスを主に形成するが,ヘリックス同士の会合のパターンは,疎水鎖を構成する炭化水素基(CH2,CH3,CH)の並進移動に起因するエントロピー利得により駆動されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた,天然構造モデルのキャラクタリゼーション法の提案は達成することが出来た。加えて,水及び疎水性環境での立体構造安定性を調べたことから,タンパク質折り畳みの基本原理を明らかにすることが出来た。これらの成果は,立体構造予測法の構築に大きな寄与をもたらすと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
立体構造予測法の構築に取り組む。いきなり実験情報を用いずに構造を作成するのは非常に困難な問題である為,まずは,出来る限り少ないNMR実験情報(願わくばケミカルシフトのみ)から優れた天然構造モデルを作成できる方法の開発について検討を行う。天然構造の立体構造予測は実験情報がゼロとなった場合に対応する。
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Research Products
(7 results)