2012 Fiscal Year Annual Research Report
コメの生産・流通・消費をめぐるクメール農民の経済的実践の変容
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12J00429
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋保 さやか 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カンボジア / クメール / コメ / 経済的実践 / 農民 |
Research Abstract |
本研究は、カンボジア農村社会における稲作をめぐる人々の経済的実践(贈与、売買、相互扶助、貯蓄)の変容に関する研究である。具体的には、コメの生産、流通、消費課程に関するフィールドワーク(聞き取り調査、参与観察、文献調査)を行い、NGOによって農村社会に導入された有機農法を中心とした新農法、SRI農法とそれがもたらす社会関係の変容に着目し、コメをめぐる「経済」の場の動態的な把握を試みることである。具体的に次の2つの点を中心に研究を進めた。 (1)国内の学会、研究会における成果発表:国内においては、これまで(2009年~2011年)にカンボジア王国タカエウ州にて行った調査で得られた一次資料の整理を行った。その成果は、国際開発学会また国立民族学博物館の共同研究会において発表し、現在は、学会発表を通じた議論も含めた成果を投稿論文や研究ノートとしてまとめ国内外の学会誌等に投稿する準備をしている。 (2)現地調査:カンボジアにおける現地調査は、2013年2月~3月(19日間)に実施。フィールド調査の具体的な内容としては、コメをはじめとする農作物の売買、日常的な経済的実践の変化についてインタビュー調査を行った。また現地の王立プノンペン大学人文社会学部、商業省、農業省、調査地域の地区(クムKum)、村(プームphum)長に調査の前後に調査に関する相談、調査結果報告を行った。特にプノンペン大学教授、商業省の役人からは、多くの研究者を受け入れても調査内容のフィードバックが少ないことから、調査の前後における相談、フィードバックを実施したことに対し感謝されると共に、今後もこのような研究を通じたコミュニケーションを継続していった欲しいとのコメントをいただいた。 長期にわたる内戦の影響から、カンボジア農村社会における開発援助の影響に関する地域研究の蓄積はまだ不足している。本研究内容に関する学会発表、アウトリーチ活動ならびに現地の大学、中央省庁、地方行政と協働、フィードバックは、総合的観点から初年度の成果として一定の意義を認めることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地協力機関の関係で現地調査が予定していた期間よりも短くなったが、国内における学会、研究会発表、現地調査の実施状況など総合的観点から初年度の成果として一定の意義を認めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、24年度に行った農民の経済的実践に関する歴史的変遷の調査に基づき、現在それがどのように変化をしているのかを有機米の売買を中心にフィールド調査を行う。国内では、前年度に引き続き研究発表、投稿論文執筆をするとともに、同時進行で博士論文として研究成果をまとめる作業を進める。 現地調査を実施する際には、プノンペン大学のクメール人研究者、中央省庁役人との議論の場を設けると共に、調査協力者であるタカエウ州の人々、農協に対し、研究内容のフィードバックをする。帰国後、所属学会や研究会などで成果発表をし、カンボジア研究、東南アジア研究、人類学研究の諸先生方、先輩方からの批判や助言をいただき論文に反映させながら、よりレベルの高い博士論文の完成を目指す。
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Research Products
(2 results)