2012 Fiscal Year Annual Research Report
血球系分化における核小体因子MYBBP1Aの新規機能の解明
Project/Area Number |
12J00436
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
片桐 尚宏 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 核小体 / 巨核球分化 / 核小体崩壊 / c-MYB |
Research Abstract |
巨核球分化時に、核小体因子MYBBP1Aが核小体から核質へと局在を変化させることによって、巨核球分化を誘導しているのではないかという仮説のもと、実験を行った。 MYBBP1Aの巨核球分化における影響を調べるため、慢性骨髄性白血病細胞株K562細胞にPMA処理を行い巨核球分化を誘導したときに、siRNAを用いてMYBBP1Aのノックダウンを行った。K562細胞の形質変化を指標に巨核球分化を評価したところ、PMA処理によって誘導される巨核球分化がMYBBP1Aのノックダウンで抑制されることが判明した。また、巨核球細胞のマーカー遺伝子であるCD41の発現量を指標に巨核球分化を検討したところ、PMA処理によって誘導されるCD41のmRNAの増加が、MYBBP1Aのノックダウンによって抑制されることが明らかとなった。したがって、細胞形質とマーカー遺伝子の発現量の結果から、MYBBP1AはK562細胞の巨核球分化を促進することが示唆された。 次に、MYBBP1Aとc-MYBが結合し、c-MYBの転写活性を抑制することが報告されている。そこで私はPMA処理によって核小体崩壊することによって、MYBBP1Aが核小体から核質へ局在変化し、核質に局在するc-MYBと結合するのではないかと考え、PMA処理時の両者の結合を免疫沈降法を用いて評価した。その結果、PMA処理によって巨核球分化と核小体崩壊を誘導すると、MYBBP1Aとc-MYBが結合することが明らかとなった。 さらに、MYBBP1Aが巨核球分化誘導時にc-MYBを抑制するかを評価した。c-MYBの応答配列を用いてレポーターアッセイを行った。その結果、PMA処理によって抑制されるc-MYBの転写活性が、MYBBP1Aのノックダウンで抑制されることが判明した。したがって、PMA処理による分化誘導時にMYBBP1Aがc-MYBを抑制する可能性が示唆された。 今年度の実験により、「PMA処理によるK562細胞の巨核球分化時に、MYBBP1Aがc-MYBを抑制することで分化を促進する」ことが明らかとなり、核小体崩壊がMYBBP1Aの局在変化を介して分化を誘導するという、新規の巨核球分化モデルの存在を示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性骨髄性白血病細胞株K562細胞を用いた血球分化の実験は計画どおりに進展し、明確な実験結果が得られていることは大変評価できる。しかし、MYBBPIAのコンディショナルノックアウトマウスの作成が、計画よりやや遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は核小体崩壊が分化を制御する可能性について解析するため、Po11転写の必須因子であるTIF-IAのノックダウンによって、核小体崩壊を誘導したときの巨核球分化におけるMYBBPIAの関与を評価する。また、実際にマウスから造血幹細胞を樹立し、MYBBPIAをノックダウンしたときの巨核球分化の評価を行う。さらにマウス生体内におけるMYBBPIAの機能解析のため、造血幹細胞特異的なMYBBPIAのノックアウトマウスを作製する。
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