2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00470
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
遠藤 香織 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ワーキングメモリ / 個人差 / 感情 |
Research Abstract |
本研究の大きな目的は「会話における感情理解の個人差を明らかにする」ことである。 わたしたちが普段会話するとき,相手の話を聞き,少しの間だけ記憶しておき,自分の知識と照合して処理することで理解している。この,「記憶」と「処理」を担っているのがワーキングメモリである。 ワーキングメモリ機能には個人差がある。ワーキングメモリ機能高群は,よく理解できコミュニケーションがスムーズであるが,低群は,あまりうまく理解できずコミュニケーションに齟酷が生じてしまう。この差の生じる過程について調べた。 まず「記憶」機能について,「会話場面での記憶方法に差がある」ことを示した。ワーキングメモリ機能高群は,ありありとイメージして記憶できているのに対し,低群は,ことばを繰り返すばかりでうまく記憶できていないことがわかった。 次に「処理」機能の差について,「会話場面での文脈処理に差がある」ことを示した。結果,心の距離が遠くなる表現と近くなる表現に対して,ワーキングメモリ機能高群は異なった理解を示したのに対し,低群は,同じような理解を示していた。 この理解の差異が生じた原因として,心的距離の遠近化表現により感情に影響が及んだ可能性が考えられる。 ワーキングメモリ機能高群はよく理解できる群である。近接化表現からはポジティブな感情が,遠隔化表現からはネガティブ感情が生じた可能性がある。 そこで,感情とワーキングメモリ機能の関連性を調べる研究を現在進めている。この計画では,話し手の感情を操作し,その上で,聞き手の感情と会話理解度を測定している。 まず,話し手の感情を表情・音声・内容の三つの側面から操作する。こうして話し手が嬉しい・悲しいといった感情を聞き手に伝える。それを聞いて聞き手は感情がどう動いたかを回答する。そして,会話の理解度を測る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年初の計画において,ポジティブ・ニュートラル・ネガティブ情報がひとの感情状態にどのような影響を与えるのか,また,これらの情報がどのように処理・保持されるのかを調べることとした。そこで,文章の感情評定調査にあたり,文章を抽出し,そこに含まれる語彙が親密度・出現頻度・心像性で一定となるものを選択した。 ポジティブ・ニュートラル・ネガティブに振り分けられる感情内容をもつ文章を210組用意した。この文章を70組ずつに分け,各々につき約30名の調査参加者に文章の感情内容を7段階で評定させた。結果を集計し,感情の値が大きい70組をポジティブ文,感情の値が0に近い70組をニュートラル文,感情の値が小さい70組をネガティブ文に振り分けた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,調査に基づいて,各感情文の音声刺激を作成する。次に,その音声刺激とリップシンクさせた表情刺激を作成する。この際,文の感情内容と表情が一致するように操作する。手順としては,文章の音声刺激を複数人に読ませた音声を音声分析ソフトウェアで分析する。分析内容に基づき音声合成ソフトウェアを用いて音声合成する。表情刺激をATR顔表情データベースを元に作成し,先の音声刺激と表情刺激をリップシンクさせた動画を作成する。成果発表の計画としては,これらの調査・開発の成果は学会等において発表することとする。
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[Journal Article] The influence of working memory capacity on experimental heat pain2013
Author(s)
Nakae, A., Endo, K., Adachi, T., Ikeda, T., Hagihira, S., Mashimo, T., & Osaka, M.
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Journal Title
The Journal of Pain
Volume: 14(印刷中)
Peer Reviewed
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[Presentation] The influence of working memory task to experimental heat pain2012
Author(s)
Nakae, A., Endo, K, Sakurai, T., Hagihira, S., Shibata, M., 0saka, M., & Mashimo, T.
Organizer
14th World Congress on Pain
Place of Presentation
Milano Convention Centre(Milano, Italy)
Year and Date
2012-08-28
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