Research Abstract |
痛みというネガティブ刺激とワーキングメモリの関係を調べた研究1)と, 背景音というポジティブにもネガティブにもなりうる刺激とワーキングメモリの関係を調べた研究2)を行った。 まず1)について, 痛みは, 不快な体験である。注意は痛みの制御の重要な要因であり, 痛み研究のメタ分析では痛みによるワーキングメモリ機能障害が示唆されている。ワーキングメモリへの負荷が痛みの感じ方に与える影響を明らかにした研究では, ワーキングメモリ負荷が高い場合, ワーキングメモリ機能低群は, 痛みを弱く評定した。よって, ワーキングメモリの個人差と痛みの処理が関係することが明らかになった。今年度の研究では, 痛みが, ワーキングメモリでの処理にどのように影響するかについて明らかにすることを目的とした。その結果, 痛み負荷による影響は, 正誤判断と単語記憶の二重課題を遂行しなければならないようなワーキングメモリ事態にて, その遂行効率を低下させるものであることが示唆された。 また2)について, 静かな環境でないと集中できない人もいれば, 音楽を聴きながら勉強をしたり, カフェで仕事をしたりできる人もいる。本研究では, リーディングスパンテスト課題の遂行に背景音(静音・音楽・雑音)が及ぼす影響およびワーキングメモリの個人差との関係を調べた。また, 参加者に作業時の音楽・雑音が気になる程度を調査した。この結果, 背景音に関わらず成績は一定であった。さらに, 音楽が気になる群では, 個人内で標準化した成績が静音条件で良く, 音楽条件で悪かった。ここから, 全体として背景音はワーキングメモリに影響を及ぼしていないことがわかった。また, 音楽と雑音が個人に及ぼす影響は異なっており, 特に音楽が気になる人々は, 自身の静音環境と音楽環境でのパフォーマンスを正確にモニタリングできており, 音楽環境を苦手と感じている可能性が示唆された。
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