2012 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤排出ポンプの構造・機能・発現制御と生理的役割に関する研究
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12J00486
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 聖司 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1) (70757301)
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Keywords | 排出ポンプ / 多剤耐性菌 / 緑膿菌 / 大腸菌 / AcrB / トランスポーター / 感染症 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
1、生体防御におけるLPSと薬剤排出ポンプの関係性:細菌は、環境中の異物から身を守る防御システムとして、異物の菌体内への流入を防ぐLPS(外膜に存在}、菌体内に侵入してきた異物を排出する排出ポンプ(外膜及び内膜に存在)の両方を保持している。双方の関係については従来から注目されていたが、遺伝子レベルで詳細に解析されたことはなかった。本研究では、遺伝子欠損株を用いてLPS長を段階的に変化させ、排出ポンプはLPSが消失した状態でも機能すること、LPSの消失による薬剤耐性能の減少は排出ポンプの過剰発現では完全に補えないということを明らかにした。細菌の薬剤耐性においてLPSと排出ポンプの双方が不可欠であるという本結果をまとめた論文は、抗菌薬分野における代表的な国際ジャーナルJournal of Aptimlcrobial Chemotherapy誌に掲載された。 2、排出ポンプの阻害剤結合様式の解明:既存の阻害剤は、大腸菌等の排出ポンプAcrB、緑膿菌のMexBを強力に阻害するが、緑膿菌多剤耐性においてもう一つの重要な排出ポンプMexYを全く阻害できないため実用化に至っていない。その原因を調べるため、AcrB・MexBの阻害剤結合構造を決定した結果、排出ポンプ内部において、阻害剤結合ピットの存在が明らかとなった。AcrB・MexBの阻害剤結合ピットにあるPhe178がMexYではTrpに置き換わっており、その大きな側鎖による立体障害で阻害剤が結合できなくなっていると推定された。実際に、AcrBF178W変異体は阻害を受けなくなり、MexYW177F変異体は逆に阻害されるようになったことは、この推定を裏付けるものであった。これにより、排出ポンプの阻害剤特異性は、阻害剤結合ピットの立体障害により決まることが明らかになった。本結果は現在Nature誌に投稿・改訂中であり、後に続く新規阻害剤開発に大いに役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多数の遺伝子欠損株の解析により生体防御におけるLPSと薬剤排出ポンプの関係性、また阻害剤結合ピットの発見により排出ポンプの阻害剤結合様式が解明され、双方論文としてまとめることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに、緑膿菌や歯周病細菌で問題となる、バイオフィルム形成における排出ポンプの役割について新たな知見が得られてきたので、引き続き研究を進めていきたい。また排出ポンプの阻害剤結合様式に関しては、推定通りAcrBF178W変異体は阻害を受けなくなり、MexW177F変異体は阻害されるようになったが、MexBF178W変異体は依然として阻害剤に感受性を保っていた。MexBの阻害剤結合ピット下部の空間が大きいことが影響していると考えられるため、MexBFI78Wの阻害剤結合構造を決定した後、AcrB・MexYにおいてMexB型スペース保有変異体を作り、活性測定を行う予定である。
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Research Products
(6 results)