2013 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症児者と養育者との関係障碍改善と関係発達を促す援助法・評価法の開発
Project/Area Number |
12J00498
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
榊原 久直 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 関係障碍 / 関係発達 / 自閉症 / 臨床動作法 / のびのび・どっしり体操 / 相互主体性 / 間主観性 / 気になる子 |
Research Abstract |
自閉症児者と養育者を対象として関系障碍のアセスメント面接の考案を目的とした研究を行った。また両者の関系援助の理論化とその効果を測定する方法を検討した。 1. 前言語期の自閉症幼児とその養育者に介入を行い, その介入風景のビデオデータを収集した。加えて, WHOがQOLを測定する新たなインタビュー法として認定しているSEIQOL-DWを基礎とし, そのインタビューガイドを一部改編して, 子どもと養育者との関係性を測定するインタビューを作成した。その技法を, 半年間介入に参加した4家族を対象として実施し, 介入前後の関係性の変容を測定した。調査の結果, 関係性のQoLスコアには一貫した増減の傾向は見られなかった。他方で関係性QoLを規定する領域そのものや, その内窓に関しては変化が見られた。カテゴリの変化点としては, 子どもとの関わり合いに際して自身の情緒的な側面を意識して関わること(内省 : Maternal insightfulness)や, 子どもがコミュニケート可能な存在であり自身の感情をもって他者と繋がりを持てる存在であることへの意職化(Mind-Mindednessの向上)といった共通の変化が見受けられた。 2. 介入のビデオ分析を行い, セラピストと自閉症児との関係性の変容を, 量的な形で示した。加えて, 関係発遠の中での個体発達と言う視点から, 行動分析の結果, 自閉症児の情動表出の増加と発声行動の増加との問に波形上の類似点が見受けられた。このことから自閉症児コミュニケーション行動と情動生起との間の関連性が示唆された。また, 介入により, 自閉症児の視線一致, 情動共有, 活動の共有, 身を委ねる遊びの頻度の増加後, 象徴遊びの出現が見られるという一貫した傾向が見受けられた。このことから, 前言語期の自閉症児の関係援助においては, 情動の生起を促す関わりをする中で, 情動や行動を共有するという関係の構築を図ることが, コミュニケーション行動や象徴機能の発達, ひいては養育者との関係性の変容への発展する可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の中で得たライセンスや今日的な母子臨床の知見をもとにした, インタビューの作成・改編とそ互実施, 相互作用観察を行った。データ量は, 半年間の介入研究の前後に実施する形式であるため十分な数であるとは言えないが, 現在も調査を積み重ねており, 次年度の中でひとまずの区切りをつけて分析を行う予定である。他方, 今年度は, 自閉症に限らず, 発達障害に類する状態像を示す情緒的な課題を抱える幼児・児童とのセラピーや, 彼らとその養育者らとの関係アセスメント調査を複数実施しており, 母子関係を子どもの障碍特性に限定せず, 双方の情緒的要因や発達的要因など, 多様な側面から測定し考察するデータを得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
原則として次年度に限らず, 現在行っている介入調査のデータ数を積み重ねていくことを予定している。ただし次年度においては, 半年間を目途に, これまで収集したデータを総合的に分析する作業を中心的に行っていくことを予定しており, 前言語期の自閉症児とその養育者の関係援助のプロセスを, まずは少数名のデータよりモデル化し, 他のデータとの比較検討の中で, モデルの精緻化を図ることを予定している。加えて, 援助過程で見受けられる現象を微視的に分析することで, 介入の方法論の理輪的整備や, 母子関係のアセスメント技法の確立, および介入ポイントの選定方の検討など, 関係援助についてのより具体的な視点を確立することを試みる。その際には, 臨床心理学的な視点だけでなく, 発達心理学的な概念も活用し, より多面的で包括的な理論を生成することを目的とする。
|
Research Products
(6 results)