2012 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシグナリング:解糖系代謝物によるTORC2の新規活性化機構の解明
Project/Area Number |
12J00522
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 亘 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | メチルグリオキサール |
Research Abstract |
メチルグリオキサール(MG)は解糖系から生ずる代謝物である。これまでにMGは、糖尿病との関連が指摘されているが、糖尿病の発症や増悪化における分子機構はよくわかっていない。インスリン抵抗性は2型糖尿病の病態の一つであり、IRS(インスリン受容体基質)のSer/Thr残基のリン酸化はインスリン抵抗性を引き起こす。インスリンシグナルの活性化はネガティブフィードバックループの活性化を介して、IRSのSer/Thr残基のリン酸化を亢進する。本研究では、MGが「シグナル因子」として機能する可能性に着目し、インスリンシグナル系、特にtarget of rapamycin(TOR)が形成する複合体であるTORC2が関与するシグナル系の活性化機構を解明するとともに、インスリンシグナル系におけるネガティブフィードバックループに及ぼすMGの影響について明らかにすることを目的とした。 TORC2は酵母-哺乳類間で保存されており、これまでに私は、出芽酵母においてMGがTORC2の活性化因子として機能することを見いだしている。本年度は、MGによるTORC2シグナルの活性化機構が哺乳類細胞でも保存されているかどうか、脂肪細胞(3T3-L1)、筋芽細胞(C2C12)を用いて検討した。その結果、MGはTORC2の基質であるAktのSer473のリン酸化を亢進したことから、哺乳類細胞においても、MGはTORC2シグナルの活性化因子として機能することを明らかにした。 次に、TORC2の活性調節因子の取得を目的として、出芽酵母を用いてMG感受性を指標にしたスクリーニングを行った。また、TORC2活性化の直接的な指標として、これまでにTORC2の直接の基質であることを見いだしているPkc1のSer1143に対するリン酸化特異的抗体を作成することでTORC2活性の評価系を確立し、スクリーニングに適用した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的には、これまでに出芽酵母で明らかにしてきた解糖系代謝物メチルグリオキサールによるTORC2活性化機構が、哺乳類細胞でも確認され、メチルグリオキサールによるTORC2活性化の生物種間での普遍性を立証することができた。また、酵母細胞における、TORC2シグナルの評価系の確立を目的に、TORC2の直接の基質であるPkclのSerll43に対する抗リン酸化抗体を作成し、メチルグリオキサールのTORC2を介したPkclの活性化機構の詳細の解析につとめた。さらにこの評価系を利用して、新規TORC2調節因子の取得を目的としたスクリーニングを実施し、取得因子について、現在解析を進めている段階である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析により、哺乳類細胞でもメチルグリオキサールがTORC2シグナルを活性化していることを明らかに出来たので、今後はメチルグリオキサールがTORC2シグナルを介して、ネガティブフィードバックループを活性化し、IRS-1の負の制御をすることでインスリン抵抗性を惹起するかどうか検討する。また、TORC2制御機構についても、酵母細胞を用いて引き続きスクリーニングにより、新規TORC2制御因子の取得を試みる。
|
Research Products
(4 results)