2012 Fiscal Year Annual Research Report
高次組織化されたd‐π共役系ハイブリッドシステムの設計
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12J00536
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大村 聡 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | π共役系分子 / 不斉構造規制 / レドックス / 水素結合 |
Research Abstract |
π共役系高分子ポリアニリンにアミノ酸部位を導入することで、π共役系部位を不斉構造規制することが期待される。また、ポリアニリン部位の立体化学をsyn型に制御することで、ポリマー鎖がヘリセン型コイル状を形成すると考えられる。そこで、アミノ酸部位の導入位置とπ共役系部位の立体化学に関する知見を得るために、ポリアニリンのレドックス最小ユニットであるフェニレンジアミンおよびキノンジイミン部位に着目し、検討を行った。中央の芳香環の2,3位にカルボキシル基を有するフェニレンジアミン誘導体を出発原料とし、アミノ酸部位を導入した誘導体を設計合成した。分光学的分析を行ったところ、合成した誘導体について分子内水素結合の形成が明らかとなった。また、フェニレンジアミン部位が不斉構造制御に基づき誘起CDを示すことが観測された。また、1電子酸化剤を等モル量用いることで、ラジカルカチオン種を発生させ、電子的、不斉構造特性の検討を行った。その結果、分子内水素結合の形成により不安定ラジカル種の安定化およびπ共役系部位の不斉構造を保持することを示唆する結果が得られた。 一方、キノンジイミン誘導体について、イミン窒素部位の持つ配位特性を利用することで、遷移金属原子との組み合わせによる不斉d-πハイブリッドシステムの構築を試みた。側鎖にアミノ酸部位を有するキノンジイミン誘導体を配位子として用い、酢酸パラジウム(II)と反応させることで、不斉二核錯体を得た。結晶構造解析および分光分析の結果から、得られた錯体のπ共役系部位が錯形成に基づいて不斉構造誘起されることを明らかとした。酸化還元特性について、電気化学的測定を行ったところ、還元電位がパラジウム(II)原子との錯形成によってアノードシフトすることを見出した。このことから、錯形成したキノンジイミン部位がエレクトロンシンクとして安定化されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリアニリンのユニット分子としてフェニレンジアミン骨格を用いることで、アニリン鎖の立体制御制御に関する検討を行い、アミノ酸部位導入位置によるアニリン鎖部位の立体制御についての知見を得ている。また、d-n電子系ハイブリッド型錯体に関する基礎的知見を得るために、アミノ酸部位を有するd-π共役系不斉二核錯体の合成を行った。構造特性・酸化還元特性の検討結果より、金属原子との錯形成に基づく構造および酸化還元特性について明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これらのことから、研究は概ね滞り無く進展していると考えられる。 ポリアニリンユニット分子を用いたこれまでの研究により得られた知見から、アミノ酸部位の導入により分子内水素結合が形成し、アニリン鎖部位が不斉構造制御されることを明らかとしている。そこで、側鎖にアミノ酸部位を有するアニリン誘導体を出発物としてポリアニリン誘導体の合成を試みることで、分子内水素結合の形成により不斉構造制御されるアニリン鎖について、不斉構造特性および酸化還元特性等に関する知見を得ることを目指す。 また、得られた不斉d-πハイブリッド錯体について、配位子部位の不斉構造に由来する不斉空間場をレドックスメディエーターとして活用することで、酸化的不斉カップリング反応や、不斉アルドール反応などの触媒能に関する検討を試みる。
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Research Products
(7 results)