2012 Fiscal Year Annual Research Report
感覚応答行動を制御する神経機能要素の実体を、神経回路の活動として理解する
Project/Area Number |
12J00556
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山添 萌子 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 感覚応答行動 / シミュレーション / 数理解析 / 線虫C.elegans |
Research Abstract |
感覚応答行動を制御する脳・神経系の機能を明らかにするためには、まず「情報抽出」や「運動制御」といった機能要素を同定し、次にそれぞれの機能要素を制御する神経回路・細胞・分子を解明するという手段が有効である。そのためには、行動解析や遺伝子レベルの解析が容易な線虫C. elegansがシンプルなモデル系として優れている。私はこれまでに、C elegansの匂い物質2-ノナノンに対する忌避行動の数理解析から「進行方向が正しいときにのみ、直進行動を開始する」など複数の興味深い機能要素が存在する可能性を示した。これらの機能要素が、2-ノナノン忌避行動の特徴である、非常に高効率な忌避を実現していると考えられる。本研究の目的は、これら2-ノナノン忌避行動を担う機能要素を実現する神経回路・細胞・分子の働きを、行動パターン解析等の数理的手法および分子遺伝学的解析を統合的に用いることにより解明することである。 今年度は、昨年度までに見出した2-ノナノン忌避行動の機能要素が実際の忌避行動を説明するかを検証するため、コンピュータ・シミュレーションを行った。まず、行動パターン解析により見出された全ての機能要素を持つモデルC. elegansをコンピュータ上で作成した所、実際の忌避を良く再現した。次に、各機能要素の忌避への影響を確認するため、特定の機能要素を持たないモデルC. elegansを作成した結果、2-ノナノン忌避行動特異的な高効率な忌避の原因を説明する機能要素が見出された。以上の結果をまとめて論文を作成し、現在投稿中である。さらに、これら機能要素の実体を解明するために、現在、(1)2-ノナノン忌避行動に関与する神経細胞のカルシウムイメージング、および(2)2-ノナノン忌避行動に異常を示す変異体の行動解析の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで2-ノナノン忌避の行動パターン解析において発見した神経機能要素は、実際の忌避行動においての重要性が充分に明らかでなかったが、今年度はコンピュータ・シミュレーションを用いて、発見した機能要素が実際の行動を充分に説明する重要なファクターである事を示せた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、2-ノナノンによる事前刺激後にはC.elegansはより遠くまで逃げる、すなわち忌避増強を起す事が知られている(Kimura et al., J.Neurosci., 2010)。来年度以降は、この忌避増強における神経機能要素の変化を、今まで用いて来た行動パターン解析・シミュレーション等に加え、当研究室で新たに開発された統合型顕微鏡等を用いて、その実体を解明したい。
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Research Products
(1 results)