2013 Fiscal Year Annual Research Report
感覚応答行動を制御する神経機能要素の実体を、神経回路の活動として理解する
Project/Area Number |
12J00556
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山添 萌子 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 感覚応答行動 / シミュレーション / 数理解析 / 線虫C. elegans |
Research Abstract |
感覚応答行動を制御する脳・神経系の機能を明らかにするためには、まず「情報抽出」や「運動制御」といった機能要素を同定し、次にそれぞれの機能要素を制御する神経回路・細胞・分子を解明するという手段が有効である。そのためには、行動解析や遺伝子レベルの解析が容易な線虫C. elegansがシンプルなモデル系として優れている。私は、C. elegansの匂い物質2-ノナノンに対する忌避行動において複数の興味深い機能要素の存在を示した。本研究では、これら2-ノナノン忌避行動を担う機能要素を実現する神経回路・細胞・分子の働きを、分子遺伝学的および行動パターン解析等で解明する事を目指している。 前年度までに、C. elegansの匂い忌避行動を定量的に解析して、新たな忌避行動戦略を数理的に明らかにした(山添ら、論文改訂中)。 今年度は、その忌避行動戦略を実体化する細胞・遺伝子を明らかにするために、匂い忌避行動の経験依存的変化(「学習」)に関わる遺伝子を遺伝学的に同定する事を試みた。この忌避匂い学習にはドーパミンシグナル伝達が関与することが知られていたが(Kimura et al., J. Neurosci., 2010)、神経ペプチド伝達も忌避匂い学習に関連する事、さらにドーパミンと神経ペプチドは異なる行動要素を制御する事を明らかにした。モノアミンや神経ペプチドなどの調節性神経伝達物質は、マウスやショウジョウバエ等の脳・神経系においても学習を制御することが知られている(Margulies et al., Curr. Biol., 2005 ; D'Hooge and Deyn, Brain Res. Rev., 2001 ; Dou et al., Learn. Mem., 2005)。しかし、これらの分子の学習における役割の関連は報告されていない。本研究では2つの神経伝遠物質が協調して学習を実現する仕組みを示しており、極めて興味深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、忌避行動戦略を実体化する細胞・遺伝子を明らかにするために、匂い忌避行動の経験依存的変化(「学習」)に関わる遺伝子を遺伝学的に同定する事を試みた。この忌避匂い学習にはドーパミンシグナル伝達が関与することが知られていたが(Kimura et al., J. Neurosci., 2010)、私は神経ペプチド伝達も忌避匂い学習に関連する事、さらにドーパミンと神経ペプチドは異なる行動要素を制御する事を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の結果を論文にまとめて投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)