2012 Fiscal Year Annual Research Report
本土在住の沖縄県出身者の家族とコミュニティに関する文化人類学的考察
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12J00589
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
平井 芽阿里 國學院大學, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 沖縄県出身者 / コミュニティ / 家族 / 沖縄県人会 / 宗教的連帯 / 移住 / 多元主義 / 沖縄 |
Research Abstract |
平成24年度は、主に文献資料調査と実地調査を行った。実地調査では、まず沖縄県出身者が本土で結成した各種団体を「沖縄系コミュニティ」とした上で、主に沖縄県人会(連合会)の集まりや調査会に参加することによって、愛知県の沖縄関連の芸能団体、婦人会といった沖縄系コミュニティを島嶼的差異、出身地に留意しながら把握した。次に、各種コミュニティ内での個々人の実践(民謡・舞踊の習得、組織の維持、参加)に着目し、個人を対象としたライフヒストリーの聞き取りやインタビュー調査を行った。また、6月と11月には本土在住の沖縄県出身者を対象とし、故郷、沖縄県で行われる祭祀儀礼の参与観察と聞き取り調査を行った。 次に文献資料調査では、沖縄県庁が管理する全国の沖縄県人会に関するデータ収集に加え、国立国会図書館や大学図書館、公共図書館や公文書館等の研究、行政機関における先行研究および行政、統計資料・新聞、雑誌記事・インターネット情報の収集・閲覧・複写・分析を行った。そして、先行研究で「沖縄人」としてカテゴリー化されたイメージが時代によって異なっている点、例えば1972年の日本本土復帰以降、メディアによって創造された「沖縄イメージ」や、1990年代以降ドラマや映画を通して登場した「癒しの沖縄」、「かっこいい沖縄」という表象から年代ごとに分析し、沖縄系コミュニティに表象される「沖縄」像を導き出すことを試みた。また、1920年から1960年代の出稼ぎ、集団就職者の移住状況等のデータ収集(沖縄県公文書館所蔵名簿閲覧)も行った。 本研究の意義は、本土在住の沖縄県出身者の各種団体を沖縄系コミュニティと捉えた上で、コミュニティに所属する個々人のライフヒストリーを多元主義的に明らかにした点にある。また、これまで関西、関東地区に次いで出稼ぎが多かったにも関わらず、先行研究ではほとんど述べられる事のなかった中部地区の沖縄系コミュニティの実態を明らかにした点も、重要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、文献資料調査と本土および故郷、沖縄県での数回にわたる実地調査によって、本土在住の沖縄県出身者の家族とコミュニティに付加された「沖縄人」、「沖縄」という表象を、所属する個々人の日常的実践の分析を通して改めて多元主義的(Pluralism)視点から再検討するための、基礎的なデータを収集することができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の段階では、本土在住の沖縄県出身者および沖縄系コミュニティを把握するための調査地として、1920年から1960年にかけて出稼ぎや本土就職者の多かった地域、神奈川県、愛知県、兵庫県を対象としていたが、実際に調査を行った結果、沖縄系コミュニティの把握と沖縄県出身者の出身は、本土在住者の地域を基準とするよりも、故郷、出身地ごとに区別して行った方が有用性が高いことが明らかになった。本研究の目的に関連する、故郷との宗教的連帯を考察する上では、例えば本土在住の宮古島出身者が共通に参加する祭祀集団があることもあり、今後は、必ずしも神奈川県や愛知県在住者といった区別ではなく、島嶼的差異に留意し調査を進める予定である。
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Research Products
(9 results)