2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00592
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
董 玉テイ 京都大学, 学術情報メディアセンター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 2音節語 / 日本語話者 / 声調の産出 / 声調の知覚 |
Research Abstract |
本年度においては、初級の日本語話者における2音節語の声調の知覚と産出の間違いを調査し、間違いが起こりやすい声調の組み合わせを見つけることを目的として研究を行いました。この調査には、京都大学の日本人学習者10人が被験者として参加しました。この被験者らは、週3時間の授業を1年間受けてきました。出身地はばらばらであるが、母語は日本語です。被験者はまず産出タスクを行い、スライドに表示された中国語の2音節語を読み上げました。その後、知覚タスクにおいて、音声ファイルで再生された中国語の声調を解答用紙に書き込みました。 まず、知覚における声調の間違いについて説明します。知覚実験において、3-1の声調の擬似語と1-3の実在語が被験者にとって最も難しいことがわかりました。両方において、一声と三声が含まれているが、その順序が異なります。それに加えて、1-3,2-1,2-3,3-2,3-4,4-2,4-3の7種類の間違えやすい声調の組み合わせが、擬似語と実在語の両方に見られました。被験者の発音にも共通して同じ間違いが見られれば、知覚と発音には何らかの関係があることが帰結します。次に、2音節語の声調産出の問違いは次のようになります。産出実験における被験者の間違いの回数と比率を集計したデータから、被験者の発音の間違いは、1-3,1-4,2-1,2-3,2-4,3-2,4-3の組み合わせにおいて高いことがわかります。 擬似語と実在語における間違いの比率は聞き取りのタスクと異なるが、知覚と産出の調査結果から、1-3,2-1,2-3,3-2,4-3の組み合わせが、両方において困難であることがわかりました。被験者はこの5つの組み合わせを、知覚と産出の両方において間違えることが多かったです。特に3-1のパターンの擬似語と、1-3のパターンの実在語は、被験者にとって聞き取りが最も困難でした。発音に関しては、一声(高平板調)が十分高いピッチで発音されておらず、第1音節の二声(上昇調)の上昇が十分でなく、第2音節の声調と区別できていませんでした。また、被験者は音節の位置に関わらず三声を発音するのが困難でした。1音節目と2音節目の声調の間違いを比べると、知覚においては1音節目のほうが2音節目より難しいことがわかるが、発音においては逆です。2音節目の声調は1音節目に影響を受けるため、被験者は2音節目の発音をより多く問違えます。また、擬似語や実在語を聞いて声調を選ぶ方が、同じ語を発音するよりも困難であることが明らかになりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本語話者の音声的な特徴を考慮に入れ、これまでの断片的な研究ではなく、知覚と産出という二つの側面から、日本人学習者の中国語声調、単母音及び子音の習得過程を縦断的に分析・考察しています。 平成25年度においては、初級の日本語話者における2音節語の声調の知覚と産出の間違いを調査し、間違いが起こりやすい声調の組み合わせを見つけることを目的として研究を行いました。その結果、知覚と産出においては1-3,2-1,2-3,3-2,4-3の組み合わせが、両方において困難であることが判明し、特に3-1のパターンの擬似語と、1-3のパターンの実在話は、被験者にとって聞き取りが最も困難であることがわかりました。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、日本語話者による中国語の2音節語の声調の知覚と産出について分析してきましたが、平成26年度から、単母音および子音の知覚と産出について調査・分析します。分析の際に、中国語話者による主観的な判断のほか、「Praat」などソフトウェアによる音響的な分析も行う予定です。また、知覚と産出の2つの側面から、2回にわたって追跡的な調査を行い、その動的な習得過程における変化を明らかにします。 最終的には、日本語話者による中国語の声調、単母音と子音の知覚と産出における問題点を詳細に記述し、博士論文として完成していく予定です。
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Research Products
(2 results)