Research Abstract |
本研究の目的は,方法知を表現する言語的伝達(内容知)を媒介した方法知の学習について検証し,その特定の言語的伝達の種類と機能(効果)及び課題に対する適用条件と適用範囲を明らかとすることにある.そのために,当該年度では,調査フレーミングの設定に取り組んだ. 調査において学習者現実という学習者固有の主観的データを採取し,分析するためのフレーミングを,既存の調査アプローチの比較検討及びその背後にある認識論の理論的再検討を行うことを通じて設定した.その際明らかとした点は次の通りである. 外部の情報(概念)を解釈し,それを踏まえ自身の意味(信念)を作っていく過程の分析のように,概念と信念の分離を認めることを概念主義と呼ぶが,この概念主義の立場を採ることで,学習者が自分だけのモノサシで自分だけの現実を構成し学習に取り組む様が明らかとなった,学習者は外部の情報全般について,「それをそれ」として,あるいは,「それはそれ」 として括弧に括り,その上で自分の解釈に基づき判断し,意味付けている. そして,それ故,「客観的な知識」というものは存在せず常に「誰かにとっての知識」である.知識の所有者が自分であれば信念として,他者の所有であれば概念として対象化される.それゆえ,知識は私秘的な性質を帯びる.この私秘性のため,知識の所有は,方法知の遂行であるパフォーマンスとして示されることによってのみ証明される.たとえ,知識が内容知であっても,「Xを知っている」は存在証明されず,「Xについて口頭で説明出来る」や「Xについて答案用紙に解答出来る」という,特定の方法知との組み合わせによって示される. この方法知の観察を通して,遂行論的次元で知識を確認していくことが,言語的伝達と方法知の学習の調査・分析に有効な視座となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた対象校での調査実施が困難となったため,調査の開始が遅れることとなったが,予定を一部変更し,調査対象校の選定をやり直すことで対応した.これにより,遅れは,次年度での修正によって全体計画に影響しない程度に収まっている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,現在着手している調査を継続する.当該年度の成果である調査フレーミングを用いて,実際の学習場面における学習者の学習者現実に関するデータを採取し,学習者の主観的解釈の変化,学習の深化に伴う理解の変遷に関して継続的な調査を行うことで,当課題の総括的な成果を得たい.
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