2012 Fiscal Year Annual Research Report
η'粒子を用いた対称性の破れによる質量生成機構の実験的解明
Project/Area Number |
12J00608
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 夏希 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原子核物理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、η'中間子の原子核内での質量変化を測定することにより、対称性の破れによる質量生成機構の検証実験を行うことである。本研究では現在建設の進められているLEPS2ビームラインの高エネルギーγ線を用い、^<12>C(γ,p)η'^<11>B反応により、11B標的中にη'を生成する。そしてη'中間子と原子核の束縛エネルギーから質量変化の観測を行う。束縛エネルギーは、前方に散乱される陽子のエネルギーを測定することによって求める。陽子のエネルギーはターゲットの前方約12.5mの位置に設置された高抵抗板検出器を用いてTime-of-Flight(TOD測定法により測定する。 本研究ではη'原子核の束縛エネルギーを20MeV以下の精度で測定することを目標とする。20MeVのエネルギー分解能を達成するためには、時間分解能50psのTOFシステムの開発が必要であり、本年度はこのTOFシステムの開発を行った。TOFシステムの時間分解能は、主に使用する高抵抗板検出器と、アンプ、ディスクリミネーター、TDCの4つの時間分解能によって決まる。そのため、高い時間分解能を持つ高抵抗板検出器と、アンプ、TDCを開発することが重要である。本年度は特に、高抵抗板検出器の大型化とアンプについて開発を行った。 高抵抗板検出器は、実機と同サイズの23cm×100cmのものを製作し、評価を行った。その結果、前年度までに制作した15cm×40cmの小さいサイズの試作機と変わらない、約30psの時間分解能が得られた。アンプは複数種類の試作機を製作し、評価を行った。そのうち、ヒ化ガリウムの高速トランジスタを用いたアンプは非常に良い時間分解能を示し、約25psの時間分解能を達成した。 残るディスクリミネーターとTDCの寄与は約30psであり、大型化した高抵抗板検出器と開発したアンプと合わせて約50psの時間分解能となる。本年度の成果により、実機で目標とする50psの時間分解能を持つTOFシステムの製作が可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は大面積の高抵抗板検出器の開発、及びアンプとTDCの開発を予定していた。高抵抗板検出器の大型化とアンプの開発については上述の通り、目標を満たす性能のものの開発に成功した。TDCについては市販のVMEモジュールの性能評価を行った。その結果、内部クロックのジッターをオフラインで補正することにより、目標性能を満たす約20psの時間分解能を得られることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は残るディスクリミネーターの開発を行う。ディスクリミネーターは既に試作機が完成しており、少し修正を加えて、来年度前半には最終版が完成する予定である。ディスクリミネーターの性能が確かめられ次第、実機の生産に移る。来年度後半にはインストールを行い、本研究の目的である^<12>C(γ,p)η'^<11>B反応の測定を始める。
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Research Products
(5 results)