2012 Fiscal Year Annual Research Report
超微小試験による耐照射性バナジウム合金の照射硬化評価とバルク材変形特性の予測
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12J00617
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
宮澤 健 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 核融合炉構造材料 / バナジウム合金 / 固溶硬化 / 超微小押込み硬さ試験 / 照射硬化 / 有限要素法 |
Research Abstract |
侵入型不純物である酸素もしくは窒素を0.2 wt%添加し、固溶強化を目論んだバナジウム合金V-4Cr-4Tiを試作し、その合金の硬さの熱処理温度依存性と引張特性を明らかにした。酸素・窒素不純物を添加した合金の引張特性は、酸素量0,1 wt%まではその量の増加に伴って降伏応力と最大引張強度は線形に増加したが、酸素量0.1 wt%を超えると降伏応力と最大引張強度は増加せず、むしろ減少した。材料の延性を表す一様伸びと全伸びは酸素と窒素量の増加によって顕著に減少することは無かった。透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた微細組織の観察から、酸素量が増すにつれて200nm以下の微細なTi析出物が数多く観察されることが明らかになった。酸素量が0.1 wt%以上になると、酸素は母相内の固溶限を超え、Ti析出物の生成が促進されると考えられる。故に、酸素量が0.1 wt%以下の場合では、添加された酸素不純物が母相に固溶することで材料は強化(固溶硬化)された。酸素量が0.1 wt%以上の場合では、酸素不純物はTi析出物に取り込まれ、固溶硬化を引き起こさないと考えられる。平成24年度では、様々な材料強度を持った不純物添加合金の非照射時の引張特性と微細組織を明らかにした。次に、短時間で大きな材料損傷を与えることができるイオン加速器を用いてCu^<2+>イオン照射試験を行った。バナジウム合金の下限運転温度は450℃付近と見込まれており、その原因は照射損傷による硬化・脆化である。Cu^<2+>イオン照射試験は照射による硬化(照射硬化)が顕著に起きる200℃で行なわれた。バナジウムへのCu^<2+>イオンの飛程は0.95μmである。表面近傍の照射硬化の評価には超微小押込み硬さ試験法を用いた。照射損傷領域において硬さの増加(照射硬化)が確認された。有限要素法解析を用いて超微小押込み硬さ試験の模擬に着手しているところである。超微小押込み硬さ試験と有限要素法解析を組み合わせることで、Cu^<2+>イオン照射後押込み硬さ試験による照射硬化を、中性子照射後引張試験による照射硬化と直接比較するための手法の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な材料強度を持ったバナジウム合金の引張特性と硬さの評価は平成24年度で終えた。Cu^<2+>イオン照射試験についても実施され、超微小押込み硬さ試験を用いて照射硬化を確認した。有限要素法解析を用いて超微小押込み硬さ試験の模擬に着手しているところであり、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引張試験から得られる材料構成式に基づいた有限要素法解析では、表面近傍における押込み変形挙動を十分に再現できない。なぜならば、超微小押込み硬さ試験では照射をしなくても表面から1μm程度の深さまで特有の硬化現象(ISE : Indentation Size Effect)が現れるため、単一な材料構成式ではISEを再現できない。NixとGaoは、圧子との接触面では拘束された状態で局所的大変形が起きることから、引張試験等で自由表面を持つ試験片が均一に変形するときと比較して、より高密度の転位が接触面近傍に導入されるとしてISEを説明した。このNix-Gaoモデルを材料構成式に反映させて有限要素法解析を行うことで、ISEと照射硬化を定量的に分離評価できる手法を開発する。
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Research Products
(3 results)