2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00644
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
佐藤 成祥 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 交尾後性選択 / ヒメイカ / 捕食リスク / 父子判定 |
Research Abstract |
本研究は、交接後に雄から渡された精子塊を雌が排除することが分かっているヒメイカにおいて、この行動が密かな雌の配偶者選択(Cryptic Female Choice : CFC)であるか検証し、その繁殖生態においてどのように影響を与えているかを調べると共に、本種におけるCFGと捕食リスクとの関係を明らかにすることでその進化過程を解明することを目的とする。 二年目にあたる今年度は、水槽実験と遺伝子マーカーを使った父子判定によりCFCが繁殖成功に及ぼす影響を調べると共に、長崎個体群の捕食リスクを調査し、捕食リスク環境下での交接行動を観察することを目標とした。精子塊排除によるCFCを証明するためには、本種の受精成功が、雄による受け渡し精子量ではなく、精子塊排除行動によって雌の体に残った精子量と強い相関関係にあることを示す必要がある。昨年度、雌に二個体の雄を一日おきに交接させ、それぞれの雄の射精量と交接後の精子排除量を計測し、雌を隔離し産卵させ、孵化稚仔を得ることに成功している。本年度はこの実験で得られた行動データの解析と共に、DNAサンプルを使った父子判定を行った。射精量と精子排除量、精子残存量の関係を見ると、残存量には射精量だけでなく、排除量が強く関係していることから、雌による精子排除は残存量に影響を与えていることが確認された。また、受精成功と射精量、精子残存量の関孫を調べた結果、射精量との間には関係性が見られなかったが、残存量の間には強い正の関係が見られた。以上の結果から、精子塊排除は受精成功に大きな影響を与え、この行動がCFCとして機能していることを強く示唆することが明らかとなった。一方の捕食リスクに関する実験だが、昨年度、長崎の調査地で多数確認されていた捕食者候補のアサヒアナハゼが本年度はまったく出現しなかった。このため、本年度の実験を見合わせることとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
捕食リスクに関する実験は、採集地に捕食者候補のアサヒアナハゼがまったく出現しなかったことから、本年度の実験を見合わせた。しかし、新たに捕食魚を数多く採集できるフィールドを見つけたため、来年度はその個体群を使って実験を行う。 一方の密かな雌の配偶者選択(Cryptic Female Choice : CFC)証明実験は昨年度開発に成功したDNAマーカーを使用して実験を滞りなく行う事が出来た。結果も仮説を裏付ける予想通りの成果を得ることが出来た。以上の事から、本年度も順調に研究を進展させることが出来たと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たに見つけた隠岐の島の調査地が多数のアサヒアナハゼが生息していること、実際にヒメイカを捕食している様子を確認することができた。これを踏まえて、本年度もアサヒアナハゼが出現しない場合は隠岐の島から採集して実験を実施すると共に、捕食リスクの低い長崎個体群と捕食リスクの高い隠岐の島個体群における行動の違いを比較することで以前よりもより深みのある実験をすることが出来ると考えている。
|
Research Products
(5 results)