2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロゲステロン受容体ノンゲノミック機能を標的とするChIP-seq解析と創薬応用
Project/Area Number |
12J00646
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和久 剛 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 核内受容体 / ChIP-seq / ノンゲノミック制御 / 低分子リガンド / 乳癌創薬 |
Research Abstract |
核内受容体は、低分子リガンドを受容することで直接DNAに結合し転写を制御する経路(ゲノミック経路)と、直接DNAに結合することなく転写を制御できる経路(ノンゲノミック経路)がある。本研究の目的は、核内受容体が関与する疾患におけるノンゲノミック経路の同定と分子基盤解明、及び低分子リガンドによる制御を可能にし創薬応用へとつなげることである。第一年度では、乳癌細胞におけるプロゲステロン受容体(PR)の1)ChIP-seq解析、及び2)分子基盤解明を計画していた。 1)本研究では他の転写因子に結合する核内受容体を標的としているため、通常のChIPよりも強力な抗体が必要となることが判明したが、利用可能なPR抗体では十分な効率が得ることができなかった。そこで第一年度では、ChIP-seq解析系の立ち上げを最優先目標とし、解析対象を、抗体をはじめとした研究材料が揃っていた核内受容体エストロゲン受容体(ER)とKlf転写因子群に変更した。これまでにKIf転写因子群(Klf2,4,5)のChIP-seqから10-30Mと十分なリードを取得できた。しかし、有効ピーク数、認識配列ともにKlfファミリーは高スコアにヒットしなかった。これらの原因はChIPサンプル自体に起因していたため、ChIP効率とDNA断片化を最適化し、現在再シーケンスを実施中である。 2)分子基盤の解析対象も、核内受容体ビタミンD受容体(VDR)に変更した。我々は、VDRが、活性型ビタミンDである1,25(OH)_2D_3依存的に、転写因子SmadのDNA結合を阻害し腎繊維症を緩和することを見いだしていた。しかし、1,25(OH)_2D_3の副作用として高カルシウム血漿を誘発した。一方、1,25(OH)_2D_3_VDR複合体の立体構造に基づいたIn silico解析で設計した新規VDRリガンドDLAMsは、腎繊維症モデルマウスにおいて主作用は維持しつつも副作用は誘発しないことを確認できたため論文としてまとめ、現在リバイズ中である。さらに別のVDRリガンドTTYNsを用いたX線結晶構造解析から、VDRゲノミック制御の新規構造基盤を明らかとし、既に論文が受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主軸であるChIP-seq解析では、コンピュータによるドライ系の構築は順調に進展しているが、ChIP自体のウエット系では遅れが見られる。しかしながら問題点を見出すことが既にできており、充分な改善策が講じられているため大きな遅延が生じる危険は少ないと考えられる。一方、分子及び構造基盤解明においては、既に論文として受理された内容もあり、当初見込まれている以上の成果があったことは特筆すべきである。以上をまとめると、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ChIP抗体の問題からシーケンス対象をKlfに変更した。この変更に伴い、核内受容体をERに変更することになるが、ERではChIP-seqに対応できる抗体がいくつか利用可能となっている。また、Klfを特異的に制御できるERノンゲノミックリガンドが既に同定できている点も、来年度に計画している化合物のスクリーニングには非常に有利である。同様に、分子/構造基盤で標的としたVDR-Smad経路研究でも、SmadやVDRにChIP-seq対応可能な抗体があること、および、Smadを特異的に制御できるVDRノンゲノミックリガンド(DLAMs)も利用可能であることから、確実な進展が見込まれる。したがって、今後の方策としては、ChlP-seq系の立ち上げが最優先となっている。
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Research Products
(2 results)