2013 Fiscal Year Annual Research Report
プロゲステロン受容体ノンゲノミック機能を標的とするChIP-seq解析と創薬応用
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12J00646
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和久 剛 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 核内受容体 / VDR / 腎線維症 / ChIP-seq / X線結晶構造解析 / Klfファミリー |
Research Abstract |
核内受容体は様々な代謝変動に応答するリガンド依存的転写因子であり、多くの代謝異常疾患における創薬の標的分子とみなされている。核内受容体の転写機能は、DNAに直接結合することで発揮されると考えられていた(ゲノミック機能)が、近年はDNA結合非依存的な転写制御機能(ノンゲノミック機構)の存在が報告されていた。本研究では、核内受容体ノンゲノミック機構の全容解明と、創薬応用へ向けた低分子リガンドの同定を目的としている。当初の研究計画二年次では、乳がん細胞におけるプロゲステロン受容体(PR)ノンゲノミック機構の分子機構を解明し論文にまとめ、さらに新たな作動薬候補となる低分子リガンドのスクリーニングを予定していた。しかしながら、PR抗体によるChIP効率が低いことが明らかとなり、一年次目の業績報告にて解析標的の転写因子を1)ビタミンD受容体(VDR)とエストロゲン受容体(ER)、および2)Klfファミリーに変更した。本年度はさらにVDRとKIfに焦点を絞り以下の結果を得た。 1)前年度は、ビタミンD3の最終代謝物である1,25-lactoneと類似体合成化合物DLAMがVDRを介して腎線維症を抑制できるとことを、短期間(1週間)に腎線維化を発症する術式の片側尿管結さつ術(UUO)モデルマウスをもちいて明らかとし論文化を進めていた。本年度では、より生理条件化での検証のため、葉酸の単回投与による長期間(3か月)の腎線維症発症モデルマウスを用い、UUOと同様の結果を得ることができ、論文化に至った。また、DLAMによるVDR転写機能の、より詳細な解明を目的とし、DLAM・VDR複合体のX線結晶構造解析を軸として現在論文化を進めている。 2)Klfファミリーは、幹細胞(ESC)において未分化状態の維持に関わっていることが知られている。そこで本研究では、Klfファミリーの中で未分化維持に特に強く関与しているとされるKlf, 2,4, 5に着目し、ESCにおけるChIP-seqを行っていたが、有意なピークは検出できなかった。一方、心臓組織を用いた修飾ピストン(H3K4me2, H3K27me2)のChIP-seqを実施した際には、2~4万程度のピークが得られ、ChIP-qPCRでの確認もできたことから、KlfのChIp公立の低さが決定的な要因と結論づけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに、腎線維症におけるVDRノンゲノミック制御と、それを可能とする化合物DLAMの同定について論文化がなされている。一方ChIP-seqでは、ESCのKlfファミリーサンプルで有意なピークが検出できていないものの、心臓組織の修飾ヒストンサンプルにおいては、有意なピークが検出できていることから、問題は系そのものではなく、抗体の特異性・結合力価に起因していると考えられる。以上を総合すると、ChlP-seqにおいて抗体の性質という予想し難い要因で遅れが生じているものの、本研究の最大の目的である、核内受容体のノンゲノミック機構を解明し創薬応用につながる新規化合物の同定する点についてはすでに論文化もなされ、かつ、さらなる研究成果も期待できることから、おおむね順調に進展していると結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ChIP効率の改善のため、前年度では標的をKlfおよびERに変更した。本年度では、Klfに焦点を絞る一方で、系そのものの評価のため、修飾ピストンのChIP-seqも並行して実施した。その結果、さらなるChIP効率の改善が必要とされることが判明したため今後の対策として、これまで使用していたFLAGタグから、ChIP・seqに実績のある抗体が存在するGFPタグに変更する。現在、GFPタグを付加したGFP-Klf発現ESCはすでに樹立済みであるため、最終年度での解析遂行と論文化には十分な時間があると考えている。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Nucleolar protein, Myb-binding protein 1A, specifically binds to nonacet ylated p53 and efficiently promotes transcriptional activation.2013
Author(s)
Ono W, Akaogi K, Waku T, Kuroda T, Yokoyama W, Hayashi Y, Kimura K, Kishimoto H, Yanagisawa J
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 434
Pages: 659-663
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A nonclassical vitamin D receptor pathway suppresses renal fibrosis2013
Author(s)
Ito I, Waku T, Aoki M, Abe R, Nagai Y, Watanabe T, Nakajima Y, Ohkido I, Yokoyama K, Miyachi H, Shimizu T, Murayama A, Kishimoto H, Nagasawa K, Yanagisawa J.
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Journal Title
Journal of Clinical Investigation
Volume: 123
Pages: 4579-4594
DOI
Peer Reviewed
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