2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期ドイツにおける暴力の経験とナチズム -義勇軍戦士の思想と行動を中心に-
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12J00657
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 宏昌 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ドイツ現代史 / 暴力 / 経験史 / 軍事史 / ナチズム / 内戦 / ヴァイマル共和国 / パラミリタリー |
Research Abstract |
1年目となる平成24年度においては、日本学術振興会とドイツ研究者協会(DFG)の共同プログラムである「日独共同大学院プログラム(IGK)」を利用し、ドイツ・ハレ大学に客員研究員としての長期滞在を行った(平成24年4月から平成24年8月まで)。当大学では第一哲学部のProfDr-Patrick Wagnerの指導のもと、各地の文書館・図書館の訪問を通じ、研究を遂行するうえで必要となる史料の調査・収集に従事した。 研究成果としては、雑誌論文を4件公刊し、学会発表を2件おこなった。雑誌論文「ヴァイマル共和国初期における義勇軍経験」は、A・L・シュラーゲター、J・レーバー、J・B・レーマーという、ヴァイマル期ドイツを代表する三名の義勇軍戦士の経験を、それぞれのバイオグラフィを比較しながら論じたものである。雑誌論文「戦間期ドイツにおける義勇軍経験」はレーマーの戦間期における動向に焦点を当てており、内容的には学会発表「ヴァイマル共和国期ドイツ義勇軍再考」に対応している。また雑誌論文「AufdemwegindenWiderstand?」では、義勇軍戦士から反ナチ抵抗運動の闘士となったレーバーとレーマーのヴァイマル初期における義勇軍経験が、反ナチ抵抗運動へとつながる可能性を指摘した。雑誌論文「書評長田浩彰『われらユダヤ系ドイツ人』」と学会発表「【書評会】石田憲『ファシストの戦争』」では、そうしたドイツ義勇軍研究で得られた観点から、第一次大戦後のパラミリタリー運動に参加したユダヤ系ドイツ人に関する研究やイタリア・ファシズムにおけるパラミリタリー的側面を批評した。 以上の研究から、ヴァイマル初期における物理的肉体的な暴力の経験が、単純にナチズムにつながるものではないことが確認され、むしろそれと反ナチ抵抗運動との具体的関係を検討するという次年度の課題が明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数のドイツ義勇軍戦士のバイオグラフィを検討し、雑誌論文をまとめるという当初の予定のうち、A・シュラーゲター、J・レーバー、J・B・レーマーについては概ね達成されたものの、義勇軍経験とナチズムとの関係を論じるうえで重要な、義勇軍出身のナチ突撃隊指導者W・シュテンネスについては、史料の調査・収集にとどまっており、本年度は研究成果を発表することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にこれといった変更はないものの、今後研究を進めるうえでの課題は、W・シュテンネスの義勇軍経験と彼のヒトラーへの叛乱とが取り結ぶ関係を具体的に明らかにし、さらにそれを他の義勇軍戦士のバイオグラフィと比較することによって、ヴァイマル初期の義勇軍運動の経験を戦間期ドイツ史全体の中に位置づけ直すことにある。その際、本年度に収集したシュテンネスの個人史料の読解と経験史に関する先行研究の整理が、今後推進すべき作業である。
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Research Products
(7 results)