2012 Fiscal Year Annual Research Report
大気圧低温プラズマによる液中タンパク質反応の機構解明
Project/Area Number |
12J00669
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高井 英輔 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 低pH法 / プラズマ殺菌 / 膜透過性 / 殺菌因子 / ミセル / 脱色 / pH依存性 / 殺菌機構 |
Research Abstract |
本年度は、低pH法によるプラズマ殺菌の機構の実証を試みた。この機構において殺菌因子として溶液中に供給されたHOO・とO_2^-・(HOO・+O_2^-・)が想定される。3種の生菌に対する低pH法によるプラズマ殺菌の速度のpH依存性と計算から求めたHOO・とO_2^-・、(HOO・+O_2^-・)の濃度のpH依存性を比較すると、すべての殺菌速度のpH依存性は溶液中HOO・濃度のpH依存性と似た傾向を示し、非常によく相関していた。この結果は低pH法によるプラズマ殺菌においてHOO・が支配的に寄与していることを示唆している。低pH法によるプラズマ殺菌において、O_2^-・は殺菌因子ではなく、HOO・のみが殺菌因子であるのは膜透過性に起因するのではないかと考えた。低pH法によるプラズマ殺菌において、化学的にほとんど同じ性質を持つO_2^-・は殺菌因子ではなく、HOO・のみが殺菌因子である理由が、細胞内での化学反応量に起因することを証明するために、殺菌実験に加えて色素内包ミセルによる細菌モデルを用いた実験を行った。色素内包ミセルは膜の内部にのみ色素が存在しているので、プラズマ照射により色素の脱色が起きれば、それはO_2^-・やHOO・がミセルを透過して色素と化学反応したことを意味する。実際、色素内包ミセルを用いた脱色速度のpH依存性はHOO・濃度のpH依存性と似た傾向を示し、非常によく相関していた。この結果は、プラズマ照射により溶液中に供給されたO_2^-・とHOO・のうち、HOO・だけが高確率でミセルを透過して、ミセル内部で色素に化学反応を誘起したことを示唆している。以上のように、本年度は殺菌速度および脱色速度のpH依存性とHOO・濃度のpH依存性を比較することで、殺菌機構のうち中性HOOの膜透過性に関する機構を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、低pH法によるプラズマ殺菌の機構の実証を試みて、殺菌速度および脱色速度のpH依存性とHOO・濃度のpH依存性を比較することで、殺菌機構のうち中性HOOの膜透過性に関する機構を実証したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画通りタンパク質反応量の液中空間分布を測定する。プラズマにより気・液界面から供給されるラジカルは数n~数秒程度の寿命であるため、液面からの距離(深さ)に応じてラジカル量が減少し、タンパク質反応量も変化する。本年度では、そのタンパク質反応の空間分布の詳細を実験的に明らかにする。 測定には右図のようなポリアクリルアミドゲル(PAG)と緑色蛍光タンパク質(GFP)を用いる。ゼリー状のPAGで空間的に固定されたGFPにプラズマ照射し、消光したGFPの消光量からタンパク質反応量の液中空間分布を定量化する。
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Research Products
(15 results)