2012 Fiscal Year Annual Research Report
大衆文化における〈イタコ〉像の形成と民俗文化の変容‐活字メディアを手掛かりとして
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12J00744
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
大道 晴香 國學院大學, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イタコ / マス・メディア / 表象 / 文化変容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「大衆文化」領域における表象としての<イタコ>の形成・変遷と、その<イタコ>像が「民俗文化」領域のイタコ文化に対して及ぼした影響を明らかにすることであり、本年度は「大衆文化」領域の問題に焦点を当てたうえで、主に以下の研究活動を行なった。 1.『朝日新聞』『読売新聞』と大宅壮一文庫所蔵の雑誌を主な対象として、戦前から1990年代までの<イタコ>関連記事の収集・目録化を行い、分析を行った。明治期~1960年代の時期に関しては前年度までに記事の収集・分析が凡そ完了していたため、本年度は主に1970年代~1990年までの時期を対象として収集・分析を行った。分析にあたっては、70・80年代の記事を「「オカルト」ブームによる再表象」、90年代の記事を「<イタコ>の浸透」という観点から分析し、前者はその成果を日本宗教学会で発表し、さらに同学会誌に論文を発表した。これによって、戦前から1990年代に至るまでの「大衆文化」領域における<イタコ>の具体相ならびに通時的変遷が明らかとなり、民俗文化としてのイタコを大衆文化との関係性のうちに捉える基盤が完成したと言える。 2.翌年度の予備調査として青森県に足を運び、青森県立図書館・むつ市立図書館・八戸市立図書館での資料収集、諸自治体観光課・関連機関での情報収集(特にイタコの観光資源化)、恐山での参与観察(大祭・秋詣り)を行った。とりわけイタコの観光資源化という点に関しては、社団法人八戸観光コンベンション協会様のご協力を賜り、八戸駅で2009年より実施されているイベント「イタコの口寄せ」についてイベントの利用者数や居住地の内訳といった貴重なデータを得ることが出来た。この予備調査で得た情報は来年度以降の研究および調査を遂行するにあたって非常に重要な足場となると同時に、現在のイタコの状況を鑑みれば、記録的な価値も高いと判断される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画を達成したうえで、翌年度に遂行を予定していた『東奥日報』『デーリー東北』を対象とした恐山大祭関連記事の収集にも既に着手し、国立国会図書館での記事収集ならびに目録化作業を完了させているため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は「〈イタコ〉像の「民俗文化」領域に対する影響の解明」を中心課題とする予定である。この計画に関して、当初は「(1)地域社会内部での〈イタコ〉像の受容」、「(2)地域社会外部における〈イタコ〉像受容者の「民俗文化」領域への参入」、という二局面から解明を試みる予定であったが、先行研究の分析視座を踏まえるにあたり、上記の二局面を設定することの有効性に疑問が生じたため、これを「(1)地域社会で生じた変化」、(2)「民俗文化の変容」に置き換えることとした。また、当初は「(ア)観光課が観光客に紹介しているイタコと、そうでない者との商売内容の差異を確認する」、「(イ)恐山夏季大祭を訪れるツアー参加者へのアンケートにより、現在大祭に訪れる人々の恐山に対する認識や目的を確認する」を計画していたが、現地で行った予備調査の結果、(イ)についてはアプローチの方法を変更する必要が生じたため「〈イタコ〉が霊場恐山に与えた影響を『東奥日報』『デーリー東北』の記事から考察する」に変更し、(ア)はイタコの実態に応じ実施が困難と判断したため、代替として「〈イタコ〉のもたらした需要の高まりによって生じた"新たなイタコの商売"について、実地調査から明らかにする」「依頼者が全国区となった現在の口寄せの内容・形式・方法を60年代以前のものと比較する」を設定した。
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Research Products
(6 results)