2013 Fiscal Year Annual Research Report
大衆文化における〈イタコ〉像の形成と民俗文化の変容‐活字メディアを手掛かりとして
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12J00744
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
大道 晴香 國學院大學, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イタコ / 恐山 / マス・メディア / 表象 / 民俗文化 / 文化変容 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「大衆文化」領域における〈イタコ〉像の形成と、その像が「民俗文化」領域のイタコ文化に対して及ぼした影響を明らかにすることであり、本年度は「大衆文化」としての〈イタコ〉が「民俗文化」領域に対して与えた影響という問題を中心課題としたうえで、主に以下の研究活動を行なった。 1. 国立国会図書館に所蔵される「東奥日報」「デーリー東北」の1945年~1979年の7月の記事を対象として、霊場恐山の夏季大祭に関する記事の収集を行い、記事の分析によって大祭の通時的な変化を明らかにした。その成果は、日本宗教学会第72回学術大会でパネル発表を行った後、『文化/批評』に論文として掲載された。この取り組みは、〈イタコ〉という表象がその受容者を介して霊場恐山の在り様をいかに変容させたかを探求するものであり、表象の普及と民俗文化の在り様との相関関係を問うという点で、上記の研究課題において極めて重要なポジションを占めると言える。 2. 「イタコの口寄せ」を主催する社団法人八戸観光コンベンション協会とまかど温泉ホテル、ならびにこれらの「口寄せ」に参加しているイタコおよびカミサマ系巫者から聞き取り調査を行い、〈イタコ〉の普及に伴い生じた「イベント型口寄せ」と呼ぶべき"新たなイタコの「商売」"の実態解明を行った。この成果は『都市民俗研究』に論文として発表を行っている。これまで十分な検討のなされてこなかった"新たな「商売」"の内実は、当事例に向けられた既存の眼差しに対して再考を迫る力を有している。 3. 過去に採集されたイタコの「口説」と現在活動中のイタコが為す「口説」、そしてイタコの代わりにカミサマ系巫者が行う「口説」を対象として「口寄せ」に生じた形式的な変化を明らかにし、そのうえで、この「変化」を従来の内的要因からではなく、「依頼者の脱地域化」という外的要因の観点から考察した。これもまた、既存の解釈格子に異議を申し立てる取り組みと言え、その成果については、神道宗教学会例会ならびに同大会にて口頭発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画をほぼ達成したうえで補足事項についても明確化されており、かつ既にその補填作業にも着手している状況のため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまでに得られた結果を研究目的のもとに全体的な視点から見直し、足りないと判断した部分に関しては補足調査を実施する予定である。そのうえで、これまでの調査の成果を博士論文としてまとめる作業を行う。主な補足調査としては、以下のものを予定している。 ・恐山大祭・秋詣りの来訪者動向の把握 ・イタコへの聞き取り調査(「商売」の認識について) ・「イベント型口寄せ」の主催者への聞き取り(旅行会社)
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Research Products
(6 results)