2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00760
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野下 浩司 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理論形態学 / 形態測定学 / 数理生物学 / バイオメカニクス / 腹足類 |
Research Abstract |
腹足類殻形態の定量化方法の開発と実際の標本への応用を行った. 腹足類殻形態は多様な"巻き"パタンを示すが, その一般的な定量化法は成長管モデル(Okamoto, 1988)により与えられている. しかし, 実際の標本から直接モデルパラメータを測定することが困難なため, 実証研究には殆ど用いられていない. そこで, CTによりえられる3Dデータが利用できる場合に成長管モデルの解析解をフィッティングすることでパラメータを推定する方法を考案し, 昨年度に引き続き成長管モデルを実証研究へ利用可能にする取り組みを進めた. 本方法は今後, 研究目的[1]及び[2]に取り組む上で有用なツールになる. 特に, 研究目的[2]で, ミクロな成長の素過程とマクロな形態とを結びつける上で必須である. 研究目的[1]については, 腹足類の殻形態の防御形質としての側面に注目し機能の定量化方法を提案した. 特に, 殻口部から侵入するタイプの捕食者への防御に係る形質の指標として先行研究で提案されている「螺管の長さ」, 「曲率の変化」, 「殻口形状」の定量化をCTデータやデジタルカメラデータから効率的に推定する手法を開発した. 研究目的[2]については, 腹足類の殻のCTやデジタルカメラデータといった形態データから殻口辺縁部での成長勾配を推定する方法を開発した. 成長管モデルにより殻形態の定量化を行うことで, 殻形態の局所的な性質であるAperture vector mapを得ることが可能になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は形態の定量化手法の開発に重点的に取り組んだ. 特に, 成長管モデルを利用した一般性の高い定量化手法の開発を通し, 腹足類の殻のマクロな形態とミクロな発生的基盤とを繋ぎ理解する目処が立った. 現在論文を投稿中である. 更に発生生物学的な情報のうち, マクロな形態から得られる情報を効率的に得る手法を開発中である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに開発した腹足類殻形態の"巻き"パタン定量化法の実際の標本へ適用するとともに, 分子レベルでの違いが形態的差異にどの程度反映されるのかを評価する. 本研究は東京大学の遠藤教授らのグループとともに取り組み, マクロな形態とそれを形成する発生生物学的な知見を統合する. 最終的に論文の執筆を行い, 研究成果を公開する. また, 量的遺伝学的な手法を組み合わせ, 進化的に生じやすい, または生じにくい殻形態とはどのようなものかを提示し, 進化・発生・形態と異なる階層をつなぐ研究へと進めていく予定である.
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Research Products
(5 results)