2012 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギ仔稚魚の生残に係る黒潮および沿岸流域の環境変動に関する研究
Project/Area Number |
12J00761
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
銭本 慧 長崎大学, 大学院・水産・環境科学総合研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ニホンウナギ / 数値シミュレーション / 卵稚仔輸送 / 海洋モデル |
Research Abstract |
ニホンウナギの稚魚漁獲量は大きな経年変動を伴いながら,長期的には減少傾向にある.外洋域における海洋環境の経年変動により,卵や仔魚の生残率が変動することで稚魚漁獲量が変動していることが示唆されている.しかしながら,稚魚漁獲量の長期的減少傾向については,その原因が未だ解明されていない.そこで本研究では変態期仔魚や稚魚を対象に,それらの生残に係る黒潮および沿岸流域の海洋環境変動を明らかにすることを目的としている.仔稚魚は遊泳力が乏しいため,海流に依存して,輸送拡散される.当該年度は,沿岸流域での海流の把握につとめ,対象海域としている丹後海と有明海の海洋物理データを時間的,空間的に密に取得することができた.解析の結果,潮汐の弱い丹後海では河川水が沖合に流れることで生ずる中,下層の岸向きの流れを利用して,稚魚が河口域まで輸送されることが示唆された.この物理データを用いて,再現性の高い沿岸域の流動モデルを構築することが可能となる.また,黒潮域での仔稚魚の輸送過程の数値シミュレーションを行った.現在数値シミュレーションに用いている海洋大循環モデルでは黒潮から東シナ海や日本海に輸送される粒子が極端に少なく,この海域での流動の再現性に問題があると考えられる.流動モデルの再現性向上のため,より現実的な境界条件を与えるべく,本海域で再現性が高いとされているFRA-JCOPEの使用を考えており,その作成者である東京大学小松幸生准教授に使用許可を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の最重要課題であった対象海域の重点観測を100%実施できた.観測データの解析についても,新しい知見が得られており,流動モデルを構築する前段階まで進展した.一方で,黒潮域のモデルでは,再現性の高いシミュレーションがまだ実現していない.しかし,再現性の高いモデルの使用許可を得ており,今後,出力される結果の改善が期待できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
上述したように,黒潮域において用いていた流動モデルの再現性向上が問題であるが,再現性の高いモデルを境界条件として用いる許可を得たため,出力される結果の改善が期待できる.有明海でのニホンウナギ稚魚の採集に関して,長崎大学水産学部の練習船「鶴洋丸」を用いた調査を冬期の大潮時に4度行う予定である.この調査ではニホンウナギ稚魚の分布とその時の海洋物理データを対応させることで,稚魚がどのような来遊メカニズムをもっているのかを,実地で検証でき,モデルによる出力との比較を行うことができる.
|
Research Products
(2 results)