2012 Fiscal Year Annual Research Report
余剰次元におけるクォーク・レプトンの世代構造の研究
Project/Area Number |
12J00801
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 亮 北海道大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 余剰次元理論 / ニュートリノ / 波動関数 / マヨラナ質量 / 湯川結合定数 / 暗黒物質 |
Research Abstract |
余剰次元時空における『世代構造の問題』の解決に向け、右巻きニュートリノが余剰次元空間に伝播する余剰次元模型を構築した。また、この模型によって実現される新たなシーソー機構を提案することに成功した。このシーソー機構により、第一に、ニュートリノ振動実験によって測られるアクティブニュートリノ質量が再現できていることを確認した。この新たな余剰次元模型(シーソー機構)の最も基本的な仮定は、右巻きニュートリノだけが余剰次元空間に波動関数をもち、各世代の右巻きニュートリノの波動関数とマヨラナ質量は、余剰次元空間において異なる局在化を持ちえるという点である。この結果として、この余剰次元模型(シーソー機構)は、軽いアクティブニュートリノ質量の実現に加え、強く階層的な右巻きニュートリノの質量を実現することができる。また、この余剰次元模型(シーソー機構)において、keVスケールのステライルニュートリノが宇宙の暗黒物質になる理論的模型を導出しようと考えた場合、この模型における理論的な微調整問題を自然に解決できることを指摘した。keVスケールのステライルニュートリノが宇宙の暗黒物質になる理論的模型では、そのステライルニュートリノはシーソー機構を通して、アクティブニュートリノの質量に寄与することはできず、もし寄与した場合には、それは現在までの宇宙観測結果と矛盾してしまうことが知られている。これを解決する最も簡単な方法は、対応する湯川結合定数を人為的に小さくとることであるが、ここで提案した新しいシーソー機構では、人為的に湯川結合定数を調整することなく、宇宙観測と矛盾のない結論を導くことができる。また、この余剰次元模型に自然に埋め込むことができる新たなレプトンの質量行列を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の最も重要な研究計画であった、新たな余剰次元模型を構築できたという点で、計画はおおむね順調に進展しているといえる。また、この模型から得られる実験・観測量(ニュートリノ質量・ニュートリノの混合角)が、これまでの実験・観測結果と矛盾していないという点も確かめることができた。これらの観測量を説明するにあたり、最も基本的な役割を果たした余剰次元理論の性質は、余剰次元空間上に伝播した右巻きニュートリノの波動関数の局在化、マヨラナ質量の局在化、バルク質量の大きさであることを明示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に構築した余剰次元模型では、高エネルギー実験での反応過程・レプトン稀崩壊過程に対して、実験で観測され得る大きさの反応は出ないことが予想される。一方で、この余剰次元模型をダークマター模型に適用した場合、宇宙観測からニュートリノ混合角に制限がつく。この宇宙観測からの制限と今後のニュートリノ振動実験結果を用いることにより、この余剰次元模型の可否が確認できる可能性がある。従って、2年目の現象論的解析は、ニュートリノの世代混合角とダークマター模型における観測量の精密な解析を行う。同時に、クォーク・荷電レプトンの質量階層性をいかにして、この余剰次元模型から出すことができるかの考察も進める。
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