2013 Fiscal Year Annual Research Report
ユーラシア東部湖沼堆積物の精密年代決定と環境変動解析
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12J00810
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 一充 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | ルミネッセンス年代 / 全有機炭素^<14>C年代 / old carbon effect / 余呉湖 |
Research Abstract |
本研究は, ルミッセンス測定による高精度年代決定と環境変動解析を主に行った. 申請書に書いたコア試料において, 石英・polymineralを用いた各種ルミネッセンス年代測定を行い, ^<14>C年代と比較した. 本報告書では余呉湖の結果について詳しく述べる. 3種類のルミネッセンス法のうち, まずOSLについては火山性の石英を測定しないことが最も大事であり, 今回の試料については火山性の石英の特徴を示す試料は入っていなかった. 次にIRSL, pIRIRであるが, こちらは堆積前に十分露光されても残るシグナル(残存線量)があるため, そのシグナルの量を考慮した蓄積線量測定を行った, なお, 残存線量はIRSLではゼロであったが, pIRIRでは約5Gyであった. また, IRSLシグナルではg-valueが大きく2.5-3.4%/decadeであったが, pIRIRシグナルではL5%/decade以下であったため, フェーディングはしていないと言える程度であった. 8試料中5試料について, OSL年代と^<14>C年代が一致したため, OSL年代が^<14>C年代と同じ程度に堆積年代を求められる手法であることが, まずわかった. しかし, IRSL, plRIR年代はOSL年代に比べて明らかに古く見積もられた. これは3種類の手法の「露光したときに年代がリセットされる速度の違い」が影響している, Murray et al. (2012)の室内実験によると, 露光時間が数時間以上になれば全ての手法で年代がリセットされ, 同じ程度の年代が算出されることが期待されるが, 露光時間が10-100秒程度であると, 3種類の年代が異なる可能性がある. 本研究で示した3種類のルミネッセンス法における年代差は, 本手法を用いることで, 堆積環境を推定できる可能性も示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年は, ルミネッセンス年代測定を行った, 当初の予定では自作の装置を用いることとしたが, 今年度より所属した産業技術総合研究所にある世界標準の装置を用いることで, より高精度の分析を可能とし, これまでは報告されていなかった「各種手法の違いがもたらす年代差から, 堆積環境を推定できる可能性」を指摘することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
ルミネッセンス年代と^<14>C年代との比較からは, 余呉湖の集水域からの影響, つまりローカルな環境変動が見て取れた. しかし, 閉塞湖である余呉湖は全世界的なイベントと対応している可能性もあるため, 今後はよりグローバルなイベントの記録が堆積物に刻まれていないか等に注目した解析を進める. また, 余呉湖以外の湖との比較などを行うことで, 東ユーラシア地域の環境変動のメカニズムを読み解くという当初の研究計画を今後も遂行していく.
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Research Products
(4 results)