2012 Fiscal Year Annual Research Report
種内多数全ゲノム解析によるピロリ菌日本株のヒト胃への適応進化機構の解明
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12J00830
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢原 耕史 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ゲノム / バイオインフォマティクス / 相同組み換え / 遺伝子フロー / 集団ゲノミクス / 統計遺伝学 / ヘリコバクター・ピロリ菌 / 進化 |
Research Abstract |
まず、研究対象であるピロリ菌の適応進化機構を理解する上での基盤となる、相同組み換えの痕跡のゲノム内における分布の解明に取り組んだ。当初の計画通り、日本株4株と非日本株6株の全ゲノム解読データを用い、相同組み換えがゲノム全域に渡って生じていることを、複数の指標を組み合わせて示した。全遺伝子に対してほぼ一様に相同組み換えが作用していることを、各遺伝子の有する変異量の違いを考慮に入れて示した上で、全体の傾向から外れて相同組み換えの頻度が高い(および低い)遺伝子群を同定した。この研究成果は、年度初頭に国際誌に受理され、その後の国内・国外双方の学会で研究代表者が発表した。 次に、相同組み換えが適応進化に果たす役割を理解するために、相同組み換えの痕跡と多様化選択を受けた遺伝子の分布の関係に関するゲノムワイドな研究を推進した。高頻度な相同組み換えを想定した上で多様化選択の作用を検出可能な唯一の方法を、スーパーコンピュータを駆使して初めて全遺伝子に適用し、多様化選択によりアミノ酸置換の蓄積したタンパク質残基を網羅的に同定した。欧州のタンパク質科学の研究室の協力を得て、それらの残基をタンパク質の立体構造にマップし、その生物学的意義を吟味した。さらに、多様化選択と相同組み換えの間に、塩基多様度による交絡の効果を差し引いた後でも、統計的に有意な関連が存在することを明らかにした。この研究成果は、国内・国外双方の学会発表で研究代表者が発表した。今後、相同組み換えの検出の方法論を改良した上で、論文化を進めていく予定である。 さらに、新たに沖縄株のゲノムを解読した上で、世界各地と日本・沖縄のピロリ菌の地理的な集団構造と遺伝子フローの詳細を、初めて明らかにすることに成功した。この研究成果は、年度末に分子進化学のトップジャーナルに受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ピロリ菌は、相同組み換え率が突出して高いために既存の方法が役に立たず、新たな方法論の開発が必要であることが明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度中は、海外の研究者と議論を重ね、相同組み換え率が突出して高い細菌ゲノムを解析するための、新たな方法論の開発に注力する。
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Research Products
(6 results)