2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物の「立ち聞き」における匂い受容と間接防衛活性化の分子機構
Project/Area Number |
12J00841
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 貢一 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植物間情報伝達 / 植物―植食者相互作用 / 防衛誘導 / 揮発性化合物 / 配糖体化 / トマト / ハスモンヨトウ |
Research Abstract |
本研究課題では、未食害トマトが食害トマトから放散される(Z)-3-ヘキセノールを取り込み、配糖体化することで有効な防衛を行っていることを提唱している。本年度の研究成果では、昨年度に得られた(Z)-3-ヘキセノールを配糖体化する酵素の候補遺伝子の生化学的素性を明らかにし、真の(Z)-3-ヘキセノール配糖体化遺伝子を同定することに成功した。この成果は、大気中に存在する揮発性化合物を植物体内で配糖体へと変換するための遺伝子を同定した初の成果である。 〈配糖体化酵素遺伝子の同定〉 一昨年度の研究成果である、配糖体化候補遺伝子をそれぞれクローニングし、組み換えタンパク質を用いて(Z)-3-ヘキセノール配糖体化活性を調査した。その結果、いくつかの遺伝子で(Z)-3-ヘキセノール配糖体を合成する能力があることを見出した。遺伝子によっては転移させる糖の種類が異なることも明らかになった。トマトが大気中の(Z)-3-ヘキセノールを配糖体化する場合はピシアノース配糖体として主に蓄積することが分かっているが、外部刺激などの変化によってさまざまな種類の配糖体を蓄積する能力があるのかもしれない。また、トマトのビシアノース配糖体、シロイヌナズナのグルコース配糖体を合成する能力を持つ遺伝子も複数存在することが見出された。 〈シロイヌナズナの(Z)-3-ヘキセノール再放散現象〉 予備的な実験結果より、(Z)-3-ヘキセノールにさらされたシロイヌナズナは(Z)-3-ヘキセノールを放散することが見出された。しかし(Z)-3-ヘキセノール配糖体化酵素遺伝子が冗長であるため、配糖体合成能力を持たないシロイヌナズナの作出が困難であった。よって(Z)-3-ヘキセノールの放散と配糖体生合成に相関があるかどうかは今後の課題として残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
推定された(Z)-3-ヘキセノール配糖体化酵素の候補遺伝子の生化学的解析を行い、(Z)-3-ヘキセノール配糖体化活性を有する遺伝子を同定した。また、当該遺伝子のシロイヌナズナにおけるホモログも(Z)-3-ヘキセノール配糖体化活性をもつことを明らかにできた。予定通り1年以内に候補遺伝子を同定できたことから、おおむね順調な進展であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究からトマトおよびシロイヌナズナの(Z)-3-ヘキセノール配糖体化酵素遺伝子は、それぞれゲノム中に複数存在することが見出された。これらの遺伝子は染色体上でクラスター化しているため、単純な逆遺伝学的解析が困難である。その準め研究計画の一部を変更し、より詳細な防衛誘導メカニズムを解析することで、冗長ではない情報伝達因子を見出すことが「匂い受容による防衛誘導」の全容解明の近道であると考えられる。まずは匂い受容や食害が引き起こす遺伝子発現誘導の変化を指標にして、特に重要と考えられる制御因子を見出すことに注力する。
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Research Products
(8 results)