2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内分子の選択的・リアルタイムイメージングが可能な非線形ラマン顕微鏡の開発
Project/Area Number |
12J00860
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 昌也 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非染色イメージング / CARS / 共鳴効果 / cytochrome c |
Research Abstract |
本研究の目的は、生体機能を阻害せずに細胞内の特定の生体分子を選択的に観察でき、かつその分子の動態をリアルタイムで観察できる顕微鏡法の開発である。、 2012年度は、共鳴効果を利用したCARS(Coherent anti-Stokes Raman scattering)顕微鏡の開発に取り組んだ。CARS顕微鏡法は、試料への前処理をすることなく数秒で細胞のイメージングをできる手法として知られている。しかし、1枚の画像に複数の生体分子が同時に映り込み、何が観察できているのか解釈できない場合が多かった。そこで、特定の生体分子からのCARS信号を共鳴効果で増強させ、その分布を選択的に検出することを目的とした。今回は、基礎評価として、実際に生体分子からのCARS信号を共鳴効果で増強できることを検証した。試料として、可視光を吸収して共鳴効果を示すcytochromecを用い、1064nm、912m、532nmのピコ秒パルスレーザー光を対物レンズを介して同時に集光した。3色のレーザー光は自作のクロスコリレーターを用いて時間的に重ねた。試料へレーザー光が入射すると、まず1064nmと912nmのエネルギー差に対応するcytochromecの分子振動モードがコヒーレントに励起される。さらに、532nmのレーザー光がプローブの役割を果たし、cytochromecのCARS信号が得られた。比較として、プローブに1064nmのレーザーを用いた非共鳴のCARSの場合、cytochromecからの信号は検出されなかった。この結果は、可視域の光である532nmのレーザーを用いたことで共鳴効果が生じ、生体分子からのCARS信号が増強したことを示すため、本研究の目的において重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レーザーの故障による実験の遅れが生じたため、共鳴効果によるCARS信号の増強評価および細胞の観察に至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
共鳴効果によるCARS信号の贈強度を評価し、細胞内のcytochrome cをイメージングする。さらにマイクロレンズアレイ、音響可変フィルターを導入することで、リアルタイムでハイパースペクトラルイメージングすることを目指す。アプリケーションとして、開発した顕微鏡を用いて、細胞にアポトーシス(細胞の自殺)を誘導した際のcytochrome cのダイナミクス観察を行う。 また、アルキンタグとCARS顕微鏡を組み合わせた手法の開発も行う。
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Research Products
(9 results)