2013 Fiscal Year Annual Research Report
不活性な炭素-ヘテロ原子結合の活性化を鍵とする新規ヘテロ環の触媒的合成法開発
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12J00865
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 克明 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | パラジウム触媒 / ホスホール / 炭素-リン結合切断 |
Research Abstract |
リンを含む五員環化合物であるホスホールは、その特異的な物性から有機材料としての応用が期待されている化合物である。従来のホスホール合成法としては有機リチウム試薬およびGrignard試薬とハロゲン化リンを用いる手法が一般的に用いられてきた。しかし、それらの手法には用いる試薬の取り扱いが困難なことや官能基許容性が低いという問題点があった。そこで、従来法に代わるより一般性の高いホスホール合成反応の開発が望まれていた。 このような背景のもと、昨年度に引続き不活性な炭素―ヘテロ原子結合である炭素―リン結合の活性化を鍵とするホスホールの新規触媒的合成法についての研究を行った。この手法には炭素―リン結合だけでなく通常不活性な炭素―水素結合の活性化も同時に進行するという興味深い特徴がある。また、この手法を用いることで、単純で入手容易なトリアリールホスフィンを基質として種々のホスホールを簡便に合成することを可能にした。 具体的には、2-ジフェニルホスフィノビフェニルを触媒量の酢酸パラジウムとトルエン中160℃で反応を行うことで、目的のジベンゾホスホールを80%の収率で得ることができた。つぎに、最適条件で基質の検討を行った結果、様々な官能基が本反応に適応可能であった。特に従来の合成法では用いることが困難なエステルやアセチルなどのカルボニル基、ニトリル、ブロモ基も本反応には用いることができた。さらに、鈴木―宮浦カップリングと組み合わせることで容易に入手可能な市販試薬を出発原料としたワンポットでのホスホール合成も可能であることが分かった。今回得られた生成物の多くは新規化合物であり、いくつかは興味深い物性を示すということが分かった。 最後に、量論反応を行うことで反応機構に関する詳細な知見を得ることができた。具体的には反応中間体として考えられるパラダサイクル中間体の単離に成功し、その反応性について調査するができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から取り組んでいる通常不活性な炭素―リン結合の活性化を鍵とするホスホールの新規触媒的合成法に関して、基質の適応範囲の拡大や複雑な化合物の合成への応用など反応の有用性を証明することができた。また、錯体研究等によって反応機構に関する詳細な知見も得ることができた。これらの結果は化学分野の一流誌であるAngewandte Chemie誌にて発表し、さらに表紙としてハイライト紹介された。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は炭素―水素結合および炭素―リン結合の2つの不活性結合の活性化を経るホスホール合成反応を論文として発表することができた。今後の方針として今回得られた知見を活かして、炭素―硫黄結合などの新たな不活性結合の活性化を鍵とする新規触媒的ヘテロ環合成の開発を検討していく予定である。現在のところ、予備的な結果として炭素―水素結合および炭素―硫黄結合の活性化を経るジベンゾチオフェンの合成がホスホール合成と同様のコンセプトで達成可能であるという知見が得られているので今後検討して行く予定である。また、より基質展開が容易な分子間反応にも今回得られた結果を基に展開していきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)