2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J00886
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原 健一郎 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 熱間圧延 / 高温酸化 / 金属材料 |
Research Abstract |
金属材料の熱間加工では、材料表面に「スケール」と呼ばれる酸化皮膜が生成する。スケールは材料と工具との間に介在し表面欠陥を引き起こす。また、摩擦や熱移動を介して材料変形や荷重にも影響を与えるが不明な点が多く、熱間加工の荷重、変形予測、寸法精度向上の妨げとなっている。著者らはこれまでに代表的な熱間加工である熱間圧延について、スケールの厚さを制御した実験を行い、スケールが圧延中に均一変形、分断、はく離など多様な変形挙動を示すとともに、不均一な変形をする場合は圧延荷重を低減させることを報告した。しかしながら実験は1パスでの圧延に限られており、多パス圧延でのスケール変形挙動は不明である。また、スケールの相は材料や鋼種で大きく異なるが、スケールの相が変形に与える影響についての報告例はない。 そこで本年度は、多パス圧延でのスケール変形挙動を調査するとともに、異なる鋼種の圧延を実施し、スケールの相の違いが変形挙動に与える影響を実験的に調査した。 (1)低炭素鋼について熱間多パス圧延時のスケールの変形を2通りのパススケジュールで調査した。スケールが分断すると潤滑効果が発生することが、多パス圧延においても確認された。 (2)スケールが単相となる無酸素銅を用いて実験を行った。スケールは増摩擦効果を有することが確認されたが、ロール抜熱を防ぐ保温効果と複合されることで、圧延荷重への影響は見かけ上あまり顕著には現れないものと考察された。 (3)圧延時のロールへの焼付きなどが特に問題となっているステンレス鋼(SUS304)で実験を行った。 スケールが薄い場合には圧延特性に与える影響は軽微だが、スケールが厚く下地金属が露出する場合には圧延荷重の増加が見られた。 以上のことから、生成するスケールの機械的性質、熱物性、およびスケールと地鉄の密着性に依存して、スケールの変形挙動や圧延特性への影響が変化することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は熱間圧延でスケールの圧延中の挙動に与える影響因子を実験的に調査し、熱間圧延への影響を統合的に考察するための基礎データの取得を目的とした。酸素分圧を制御した実験装置を試作したほか、低炭素鋼、無酸素銅、ステンレス鋼について、スケールの変形を調査した。生成するスケールの機械的性質、熱物性、およびスケールと地鉄の密着性に依存して、スケールの変形挙動が大きく異なることが明らかとなり、目的の基礎データが取得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度の実験結果を踏まえ、数値計算モデルを構築して、実験との比較からスケール挙動を予測する低炭素鋼では、地鉄とスケールとの間の相対すべりが摩擦減少の原因であると考えられる。そこで有限要素法を用いて地鉄とスケールとの間に相対すべりを許容した計算モデルを作成し、実験データの再現を行う。このモデルではスケールの変形が圧延特性や鋼板内部のせん断変形に与える影響を定量的に予測することを目標とする。
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Research Products
(7 results)