2012 Fiscal Year Annual Research Report
古代湖琵琶湖に陸封された海浜植物の種内分化機構の解明
Project/Area Number |
12J00888
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大槻 達郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海浜植物 / 種内分化 / 古代湖 / 琵琶湖 / 生理的分化 |
Research Abstract |
琵琶湖は胸400万年に形成された淡水湖であり、多くの海浜植物が生育する独自の生物相を形成している.それらの複数の海浜植物では、海岸集団との闇に遺伝的・形態的・生理的な分化が報告されているため、この実験系は陸封された植物における種内分化機構の解明に適したものであると考えられる。このように強封され異なる塩分環境下で生育する海浜植物は、地域適応が促進されていると考えられる.そのため、本研究では交配・耐塩性・相互移植実験により分化を促進する生殖的・生態的要因を検証し、塩分環境の有無で応答が異なる形質を明らかにする。さらに、分子遺伝学的手法により生態的な分化に寄与する遺伝的背景を明らかにすることで、陸封された海浜植物の種内分化機構について総合的に検証することを目的とする。 ハマエンドウ(Latbyrus japonicus)は日本全国の海浜と琵琶湖湖岸に生育するマメ科レンリソウ属の多年生海浜植物である。この植物でも前述同様の分化が報告されており、湖岸・海浜集団は各々の生育地へ順応していることが示唆される。その中でも光合成の特性は、植物が生育環境に順応して生きるうえで最も重要な要素であるが、これまで未解明であった。、 本年度はハマエンドウを湖岸・海浜の問で相互移植して、ガス交換光合成測定装置LI6400を用いて光合成特性(光合成曲線・クロロフィル蛍光)を比較した.湖岸に移植したものは、湖岸・海浜の集団問に違いがみられなかった.一方、海浜に移植した湖岸集団は、梅浜集団に比べて光合成遠度が有意に小さかりた.気孔コンダククンス(気孔の開閉度を示す)も同様の傾向を示すことから、湖岸集団は海浜環境においては気孔が開きにくくなっていることが示唆された。よって、湖岸集団は海浜環境において、光合成特性に違いがあることが明らかになった.一方、クロロフィル蛍光には違いが見られなかったことから、光合成特性の違いは主に気孔の開閉に依存していることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、当初の予定通りに集団遺伝学的解析が終了し、論文を投稿している(計画通り)。相互移植実験が終了し、論文執筆の段階に至った(計画以上に進展している)。サブトラクション解析よりも高度で解像度の高い解析(RNA-seq)を来年度から行うことが出来るようになり、淡水と塩水環境における海浜植物体内で発現する遺伝子の詳細を明らかにすることが期待できる(今後の研究に大きな発展が期待される)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、当初の計画以上に進展しているため、今後も計画通りに研究を遂行する必要がある。
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Research Products
(3 results)