2012 Fiscal Year Annual Research Report
水環境中におけるレチノイン酸受容体アゴニスト汚染の実態解明およびリスク評価
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12J00944
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤田 和子 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レチノイン酸受容体(RAR) / RARアゴニスト / RA類 / 4-oxo-RA類 / 活性汚泥 |
Research Abstract |
本研究は、新規の環境リスクとなり得るレチノイン酸(RA)受容体(RAR)アゴニストによる水環境汚染の実態を解明することを目的とし、今年度は、下水中のRARアゴニストとして特定されたRA類(all-trans RA(atRA)、13-cis RA(13cRA)、および4-oxo-RA類(4-oxo-atRA、4-oxo-13cRA)の活性汚泥処理による除去特性と、その分解過程で生じる未知のRARアゴニストを特定するために、2種類の活性汚泥を用いて回分処理実験を実施した。LC/MS分析による4物質の濃度測定、および酵母two-hybrid法を用いたRARアゴニスト活性測定を行い、経時変化を確認した。 RA類および4-oxo-RA類を同時添加して行った処理実験の結果より、RA類および4-oxo-RA類は、活性汚泥の種類に関係なく、水中から除去されやすいことか明らかとなった。また、RA類は汚泥への吸着により、水中から除去され、4-oxo-RA類の水中からの除去は、汚泥への吸着に加え、活性汚泥微生物の生分解も寄与することが示された。さらに、一部の活性汚泥を用いて処理を行った場合、RA類および4。oxo-RA類は減少したが、RARアゴニスト活性が減少しなかった(同様の経時変化を示さなかった)ことから、活性汚泥処理過程で未知のRARアゴニストが生じることが示された。次に、4-oxo-RA類を単独で添加した同様の処理実験を行った結果、同様の現象が確認されたため、4-oxo-RA類の分解過程で未知のRARアゴニストが生じることが明らかとなり、この未知のRARアゴニストは4-oxo-RA類の代謝物と考えられた。この代謝物の特定および生成条件を検討するため、2種の活性汚泥を用いて、汚泥濃度を変化させて、同様の回分処理実験を行った。汚泥の種類、濃度によらず、4-oxo-atRAから4-oxo-13cRAへの異性体化は比較的生じ易いことが明らかとなったが、未知のRARアゴニストが生成した時と同様の汚泥を用いても、4-oxo-atRAおよび4-oxo-13cRA以外の代謝物の生成が確認されなかった。このことから、汚泥微生物の特性が変化したと考えられ、また、未知のRARアゴニストの生成条件は非常に限定的であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下水中のRARアゴニストとして特定されたRA類および4-oxo-RA類の活性汚泥処理による除去特性を明らかにし、その処理過程で未知のRARアゴニストが生成することも明確に示すことができた。この未知のRARアゴニストの特定には至らなかったが、生成条件は非常に限定的である可能性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、今年度も、4-oxo-RA類の活性汚泥処理過程において生じる未知のRARアゴニストの生成条件の検討および特定を行う。また、活性汚泥処理におけるRA類および4-OXO-RA類の除去の詳細を明らかにするため、水相および汚泥相中のマスバランスを確認する。 さらに、河川水中のRARアゴニストの候補物質を挙げるために、LC/MSまたはGC/MS/MSを用いて、MSデータの取得を行う。MSデータを取得する際に、影響を及ぼす來雑物を除去するため、精製条件の検討も行う。
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Research Products
(5 results)